われわれの住む太陽系が属する天の川銀河の中には、2つの恒星がペアになって共通の重心を互いに回っている「連星」がたくさん発見されています。最近では、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールにほど近い場所にも、連星が見つかっています。
そして研究者たちは、われわれの星を明るく照らす太陽にも、連星を成す伴星が存在していたという手がかりを発見しつつあります。ただ、大きな疑問は、太陽がかつて連星だったとして、その伴星は一体どこへ消えてしまったのか?ということです。
そして研究者たちは、われわれの星を明るく照らす太陽にも、連星を成す伴星が存在していたという手がかりを発見しつつあります。ただ、大きな疑問は、太陽がかつて連星だったとして、その伴星は一体どこへ消えてしまったのか?ということです。

約8000光年の彼方にある系外惑星と連星OGLE-2007-BLG-349Lのイメージ(出典:ESA / Hubble)
2つの太陽が沈む『スター・ウォーズ』のような世界?
現在、私たちの太陽には伴星と呼べるような星はありません。もし目に見えるような伴星があったなら、私たちの住む地球でも映画『スター・ウォーズ』の惑星「タトゥイーン」のような2つの太陽が沈む夕日が見られたかもしれません。
しかし実際に太陽が伴星を伴っていれば、2つの恒星の重力が地球をはじめとする惑星に影響を及ぼすことになります。例えば惑星の公転軌道が複雑かつ不安定になり、地球環境も極度の暑さから極寒へ、またはその逆へと激しく変化して、生き物が生活するにはあまりにも厳しい星になっていたかもしれません。
太陽系から約4.3光年ほどの宇宙にある、太陽系に最も近い恒星アルファ・ケンタウリαには、A星とB星という、ともに太陽に近い大きさの恒星が連星を成しています。この2つの星は、太陽と冥王星の間の距離(約59億km)と同じぐらい、約58億km離れた場所で、互いを公転しています。これに、プロキシマ・ケンタウリと呼ばれる暗く小さな赤色矮星(せきしょくわいせい、小さく低温の恒星)を加えた三重連星を形成しています。
しかし実際に太陽が伴星を伴っていれば、2つの恒星の重力が地球をはじめとする惑星に影響を及ぼすことになります。例えば惑星の公転軌道が複雑かつ不安定になり、地球環境も極度の暑さから極寒へ、またはその逆へと激しく変化して、生き物が生活するにはあまりにも厳しい星になっていたかもしれません。
太陽系から約4.3光年ほどの宇宙にある、太陽系に最も近い恒星アルファ・ケンタウリαには、A星とB星という、ともに太陽に近い大きさの恒星が連星を成しています。この2つの星は、太陽と冥王星の間の距離(約59億km)と同じぐらい、約58億km離れた場所で、互いを公転しています。これに、プロキシマ・ケンタウリと呼ばれる暗く小さな赤色矮星(せきしょくわいせい、小さく低温の恒星)を加えた三重連星を形成しています。

アルファ・ケンタウリα AとB (出典:ESA / NASA)
太陽とほぼ同じ大きさの恒星2つが連星を成しているA星とB星のような実例が、太陽系にほど近い場所にあることを考えると、もし太陽に同じぐらいの大きさの伴星が存在するならば、太陽系の外縁付近か、それよりも遠い宇宙空間に目立たない形で存在する可能性が考えられます。
この説は実際に1984年に提唱されました。しかし広域赤外線探査衛星(WISE)などを使ったいくつかの調査プロジェクトでは、太陽系の近傍に、暗い恒星や、伴星のような天体が存在することを示す有力な証拠は発見されませんでした。そして今では太陽の伴星が存在するという説はほとんど支持されなくなっています。
現在は、太陽が連星であるか否かという議論は下火になっています。それでは太陽が最初は連星として誕生したものの、その後に何らかの理由によって伴星の方が失われた可能性はあるのでしょうか。
この説は実際に1984年に提唱されました。しかし広域赤外線探査衛星(WISE)などを使ったいくつかの調査プロジェクトでは、太陽系の近傍に、暗い恒星や、伴星のような天体が存在することを示す有力な証拠は発見されませんでした。そして今では太陽の伴星が存在するという説はほとんど支持されなくなっています。
現在は、太陽が連星であるか否かという議論は下火になっています。それでは太陽が最初は連星として誕生したものの、その後に何らかの理由によって伴星の方が失われた可能性はあるのでしょうか。
太陽は“双子”だった説の論拠
恒星の誕生プロセスには諸説ありますが、一般には宇宙空間に漂うガスや塵(ちり)の巨大な雲が他の星間雲の塊と衝突したり、超新星爆発による衝撃波が加わったりした際に、ある一点に巨大な重力が発生し、そこにガスや塵が凝集して核となり、加熱しながら成長する間に核融合が起こって輝き始めると考えられています。
カナダ・クイーンズ大学の研究者サラ・サダヴォイ氏は、若い連星系が数多く発見されているペルセウス座のペルセウス座分子雲を観測して、連星が形成される仕組みを調べました。ペルセウス座分子雲では恒星が頻繁に誕生しています。
調査の結果、宇宙のガスや塵でできた繭のような場所の一点に、密度が急激に上昇する場所が現れ、それが崩壊する際に複数の恒星が生み出されているとの結論に至ったとのことです。そしてそこで生まれた複数の恒星同士が十分に近い位置にあれば、互いの重力で引っ張り合うようにして連星を形成するというわけです。
カナダ・クイーンズ大学の研究者サラ・サダヴォイ氏は、若い連星系が数多く発見されているペルセウス座のペルセウス座分子雲を観測して、連星が形成される仕組みを調べました。ペルセウス座分子雲では恒星が頻繁に誕生しています。
調査の結果、宇宙のガスや塵でできた繭のような場所の一点に、密度が急激に上昇する場所が現れ、それが崩壊する際に複数の恒星が生み出されているとの結論に至ったとのことです。そしてそこで生まれた複数の恒星同士が十分に近い位置にあれば、互いの重力で引っ張り合うようにして連星を形成するというわけです。

太陽(出典:NASA)
この研究では、ほとんどの恒星はもともと連星として生まれるものの、その半数以上は、誕生から100万年ほどの間に別れてしまう可能性があるとの考えが示されました。サダヴォイ氏のこの考えを太陽系に当てはめれば、約46億年前に太陽が誕生した当初は、“双子の兄弟”である伴星がいた可能性は十分にあるといえます。
米・ハーバード大学の天体物理学者アミール・シラジ氏は2020年、太陽系外縁の「オールトの雲」と呼ばれる領域に、太陽の伴星の痕跡がある可能性を示唆しました。オールトの雲は太陽から1〜10万AU(1AUは太陽と地球の間の距離)という、非常に遠い領域で、そこでは太陽系を球状に包むように、無数の氷と岩石が浮遊しているとされます。
シラジ氏は、「オールトの雲の最果てに何兆もの天体が存在する理由を、太陽の伴星なしで説明するのは難しい」と言います。もしプラネット・ナイン(太陽系第9惑星)のような、まだ発見されていない惑星があるとしても、それが太陽からこれほど遠くに存在する理由を説明するのは「非常に難しい」ということです。
米・ハーバード大学の天体物理学者アミール・シラジ氏は2020年、太陽系外縁の「オールトの雲」と呼ばれる領域に、太陽の伴星の痕跡がある可能性を示唆しました。オールトの雲は太陽から1〜10万AU(1AUは太陽と地球の間の距離)という、非常に遠い領域で、そこでは太陽系を球状に包むように、無数の氷と岩石が浮遊しているとされます。
シラジ氏は、「オールトの雲の最果てに何兆もの天体が存在する理由を、太陽の伴星なしで説明するのは難しい」と言います。もしプラネット・ナイン(太陽系第9惑星)のような、まだ発見されていない惑星があるとしても、それが太陽からこれほど遠くに存在する理由を説明するのは「非常に難しい」ということです。

Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi