誰もが「作り手」になりたい
——BitSummit Let's Go!!でのユーザーからの反応はいかがでしたか。
まず、ほぼAIで作っているということで驚いてもらったようです。
生成AI、とくにChatGPTという「コトバ」が、世間一般に普及していることを実感しました。これは今までのAIではなかった現象ですね。Deep Learnigも大変評判になりましたが、一般の人がその実体や使い道を簡単に想像できるようなAIアルゴリズムではなかった。その点、チャットということで非常になじみやすいものになったんでしょうね。
生成AIはゲーム開発にも応用できるはずという話は、ChatGPTの登場とほぼ同時にいわれてきた話ですが、実際にそれを利用したゲーム、しかもAIだけで作ったゲームということで、驚きの目で見られました。
もっとも、ガチでゲームを楽しみたい人にとっては物足りなかったり、ロジックが破綻しているなどの意見ももらいました。
もう1つ気がついたことがあります。
RedRamはプレイヤーが、事件現場、犯人の職種、凶器、殺害の動機を設定できます。動機以外は自由入力で設定できるので、プレイヤーだけのオリジナルのマーダーミステリーが作れます。
そして、自分の作ったゲームを他人にシェアしたり、他の人が作ったゲームをプレイしたりするシェア機能も実装しています。WebアプリとしてQRコードで事件を簡単にシェアできるようにしたのですが、このシェア機能の評判がとても良かったです。
まず、ほぼAIで作っているということで驚いてもらったようです。
生成AI、とくにChatGPTという「コトバ」が、世間一般に普及していることを実感しました。これは今までのAIではなかった現象ですね。Deep Learnigも大変評判になりましたが、一般の人がその実体や使い道を簡単に想像できるようなAIアルゴリズムではなかった。その点、チャットということで非常になじみやすいものになったんでしょうね。
生成AIはゲーム開発にも応用できるはずという話は、ChatGPTの登場とほぼ同時にいわれてきた話ですが、実際にそれを利用したゲーム、しかもAIだけで作ったゲームということで、驚きの目で見られました。
もっとも、ガチでゲームを楽しみたい人にとっては物足りなかったり、ロジックが破綻しているなどの意見ももらいました。
もう1つ気がついたことがあります。
RedRamはプレイヤーが、事件現場、犯人の職種、凶器、殺害の動機を設定できます。動機以外は自由入力で設定できるので、プレイヤーだけのオリジナルのマーダーミステリーが作れます。
そして、自分の作ったゲームを他人にシェアしたり、他の人が作ったゲームをプレイしたりするシェア機能も実装しています。WebアプリとしてQRコードで事件を簡単にシェアできるようにしたのですが、このシェア機能の評判がとても良かったです。
自分だけのゲームを作って、人に遊んでもらえる (c)2023 morikatron.inc
——自分が作ったゲームを人におすそ分けできるのですね。
もともとは、苦肉の策として付け加えた機能でした。ゲームのリアルタイム生成ができなくて、その生成時間も10分より短くするのは無理だったので、「じゃあ、待ってもらっている間に、他の人が作ったゲームを遊んでもらおう」と考えたんです。
この機能のおかげで、ゲームの作り手になりたいと願う人が多いことに気づかされました。そして、生成AIは、プレイヤーにゲームを作るチャンスを提供できることもわかりました。
もともとは、苦肉の策として付け加えた機能でした。ゲームのリアルタイム生成ができなくて、その生成時間も10分より短くするのは無理だったので、「じゃあ、待ってもらっている間に、他の人が作ったゲームを遊んでもらおう」と考えたんです。
この機能のおかげで、ゲームの作り手になりたいと願う人が多いことに気づかされました。そして、生成AIは、プレイヤーにゲームを作るチャンスを提供できることもわかりました。
正しいAIと、楽しいAI
——森川さんは、AIにクリエイティブを任せることについてどう感じていますか。
生成AIは、普通のビジネスツールとして使う場合と、エンターテインメントの現場で使う場合とで、考え方を変えないといけないと思っています。
よく自分は一般のビジネスで使われる「正しいAI」とエンターテインメントの世界で使われる「楽しいAI」という分け方をしています。「正しいAI」の現場では、生成AI、特にChatGPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)の機能をそのまま使えばいいのですが、「楽しいAI」の現場ではそうはいかないでしょう。
生成AIはその名の通り「ジェネレーティブ(生成)」であって、それはイコール「クリエイティブ(創造)」というわけじゃないという認識は必要だと思います。
人の心を打つような「クリエイティブ」は、まだまだAIには荷が重いといえます。よく「無限に働けるAIだから、大量に生成させてそこから良いものを選べばいいんじゃないか」という意見があります。その手法自体は正しいと思いますが、「選ぶ」がクリエイティブなところなので、やはりそこは人間がやっているし、やるしかないという意味では、AIがクリエイティブだとは断言しにくいです。
一方で、偶然の1枚、奇跡の1枚ということもあります。AIが大量に生成するものの中には、人間が常識や既成概念、恥や損得の概念などで無意識のうちには自主規制してしまっているところを軽やかに飛び越えたものを作ってくれる場合があります。そもそもAIには恥や利害といった概念がありませんから。
この場合、AIもクリエイティブの一翼を担える、場合によっては人間を超えるクリエイティブなものをつくると言えるかもしれません。その場合も、それをピックアップするのは人間なので、人間とAIが共に協力し合ったクリエイティブという言い方が正確かもしれません。
また、人間の優れたクリエイター並みの能力をAIに期待する必要はないという考え方もあると思います。よくいわれるように、壁打ち相手になってもらう、ラフイメージだけを作らせる、メインの部分でないところを任せるなど、アシスタント的な役割を任せることは間違いなくできるでしょう。
生成AIは、普通のビジネスツールとして使う場合と、エンターテインメントの現場で使う場合とで、考え方を変えないといけないと思っています。
よく自分は一般のビジネスで使われる「正しいAI」とエンターテインメントの世界で使われる「楽しいAI」という分け方をしています。「正しいAI」の現場では、生成AI、特にChatGPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)の機能をそのまま使えばいいのですが、「楽しいAI」の現場ではそうはいかないでしょう。
生成AIはその名の通り「ジェネレーティブ(生成)」であって、それはイコール「クリエイティブ(創造)」というわけじゃないという認識は必要だと思います。
人の心を打つような「クリエイティブ」は、まだまだAIには荷が重いといえます。よく「無限に働けるAIだから、大量に生成させてそこから良いものを選べばいいんじゃないか」という意見があります。その手法自体は正しいと思いますが、「選ぶ」がクリエイティブなところなので、やはりそこは人間がやっているし、やるしかないという意味では、AIがクリエイティブだとは断言しにくいです。
一方で、偶然の1枚、奇跡の1枚ということもあります。AIが大量に生成するものの中には、人間が常識や既成概念、恥や損得の概念などで無意識のうちには自主規制してしまっているところを軽やかに飛び越えたものを作ってくれる場合があります。そもそもAIには恥や利害といった概念がありませんから。
この場合、AIもクリエイティブの一翼を担える、場合によっては人間を超えるクリエイティブなものをつくると言えるかもしれません。その場合も、それをピックアップするのは人間なので、人間とAIが共に協力し合ったクリエイティブという言い方が正確かもしれません。
また、人間の優れたクリエイター並みの能力をAIに期待する必要はないという考え方もあると思います。よくいわれるように、壁打ち相手になってもらう、ラフイメージだけを作らせる、メインの部分でないところを任せるなど、アシスタント的な役割を任せることは間違いなくできるでしょう。
森川 幸人
ゲームAI設計者、グラフィック・クリエイター、モリカトロン株式会社代表取締役、筑波大学非常勤講師
ゲームAIの研究開発、CG制作、ゲームソフト、アプリ開発を行う。ゲーム「がんばれ森川君2号」「ジャンピング・フラッシュ」「アストロノーカ」「くまうた」「ねこがきた」などを開発。ゲームAIに関する論文「ゲームとAは相性がよいのか?」(2017年・人工知能学会)などを執筆。X:@morikawa1go