ティラミス、白たい焼き、タピオカ、マリトッツォ……1990年代から2020年代のスイーツトレンド史を振り返る

Jun Fukunaga

Specialカルチャーグルメライフスタイル

2010年代:SNSと「映え」の時代

2010年に入ると、アップルがiPhone 4を発売し、日本でもスマートフォンが急速に普及し始めた。2014年にはInstagramの国内ユーザーが急増し、「インスタ映え」が2017年の流行語大賞に選ばれた。スイーツ選びで大事なのが「味」から「見た目」にガラリと変わった時代だ。

2010年にハワイから上陸した「エッグスンシングス」は、山盛りホイップクリームパンケーキの「撮影映え」で大成功。行列に並ぶ時間さえも、期待感を高める楽しみの一つになった。現在も「映えカフェ」として定着している。

2018年から始まった「タピオカ」ブームは記憶に新しいが、実はこの頃のブームは第3次ブームだ。最初のブームはタイなどのエスニック料理ブームに乗って1990年代前半にはやった、ココナッツミルクに入った白いタピオカが始まり。現在の黒いタピオカを「ストローで飲む」スタイルは、2008年に台湾の飲食チェーン店が日本に上陸したことで起きた第2次ブームがきっかけだ。

そして、第3次ブームでは「タピる」という言葉が生まれるほど浸透した。専門店が次々とオープンし、街中でタピオカドリンクを持ち歩く光景が日常となった。Instagram映えする見た目と、手軽にお腹が満たせる便利さが、若者に大ウケしたからだ。しかし、専門店の乱立とプラスチックゴミ問題、糖質過多への懸念などが重なり、ブームはやはり終焉した。

ピーク時に比べて専門店の数は減ったものの、Gong chaやCoCo都可といった有名チェーンは今でも都内を中心に複数店舗が営業している(冒頭で述べたとおり、筆者の自宅近くの店は消えたが)。

画像:Nano-Bananaで作成

2020年代:映えから健康志向、立体的な体験重視の時代へ

2021年に日本でブームとなった「マリトッツォ」は、イタリア発の伝統菓子で、"萌え断"と称される断面図のインパクトで瞬間的に流行した。しかし、ブリオッシュに大量の生クリームという構成は、「高カロリー」「食べにくい」という欠点も目立ち、他のトレンドスイーツと同じく、短期間でブームは終了した。見た目への飽きとコロナ禍を機に高まった健康志向に逆らう高カロリー仕様が、人気低下の主な理由だろう。

一方、2023年から2024年にかけては、「健康・美容効果」「SNS映え」「自分好みにカスタムできる」という3つの要素がZ世代にウケ、「アサイーボウル」が人気になった。アサイーは高タンパク・低カロリー・抗酸化作用を持つアマゾン発祥のフルーツで、その冷凍ピューレをベースにしたアサイーボウルは、ほかのフルーツやグラノーラなどのトッピングを自由に選べる。実はアサイーボウルの流行も今回が第2次ブームで、2010年代前半にもヘルシー志向の高まりで第1次ブームが起きている。

韓国カフェ文化の影響も受けて流行しているのは、表参道「Greek day Omotesando」に代表される韓国式のギリシャヨーグルトスイーツ「グリークヨーグルト」だ。アサイーボウルと同様に、健康面でのメリットとカスタマイズ性で支持を集めている。

2025年には、ドバイチョコが大ブレイクした。きっかけは、2023年末にTikTokのフードインフルエンサーが投稿したASMR(そしゃく音)動画だ。車内でチョコレートを割り、中のカダイフ(中東の細麺状生地)が「ザクザク」と音を立てる映像が大バズりし、世界中で何度もリポストされた。さらにその後、関連動画も数億回再生され、世界的なトレンドになった。このトレンドを受け、リンツやゴディバといった老舗チョコレートブランドを含む企業が、ドバイチョコや関連商品を次々と発売。ブームの拡大に拍車をかけた。
@mariavehera257

@fixdessertchocolatier WOW, JUST WOW!!! Can’t explain how good these are! When a chocolate, a dessert and a piece of art meet this is what you get! 🍫 "Can't Get Knafeh of it," "Mind Your Own Busicoff," and "Crazy Over Caramel." Order on Instagram Chatfood or Deliveroo and let me know what’s your FIX? Instagram : fixdessertchocolatier #asmr #foodsounds #dubai #dubaidessert

♬ оригинальный звук - Mariavehera
画像による「SNS映え」が広がって約10年。現在は、ビジュアルの映えに加えて、動画ならではの音声効果が生み出す立体的な体験が、2020年代半ばのスイーツトレンドを生む鍵になっている。

画像:Nano-Bananaで作成

ファッションや音楽と同じようにスイーツのトレンドも巡る

40年を振り返ると、スイーツがはやる条件が「欧米への憧れ」から「SNS映え」、そして「体験」へと変わってきたことがわかった。また、同時に、一世を風靡した人気スイーツは、比較的短期間でブームが終了したとしても、その後、定番商品として市場に根付いていることもわかった。さらに、タピオカのように何度も再評価され、ブームが復活するものもある。

今人気のドバイチョコも、いずれブームが終わるだろう。しかし、10年後、また何かがきっかけでブームが再燃するかもしれない。その時、今のブームを知る世代には懐かしく、知らない世代には新鮮に映るだろう。スイーツのトレンドもファッションや音楽と同じように巡るものなのだ。
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Jun Fukunaga

ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。

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