人材もAIも、ハイコンテクストが働きやすい?ビジネスにはびこる“ローコンテクスト”の罠:鵜の目「鷹木」の目

鷹木 創

AISpecial
年度末を迎えていろいろ断捨離を推し進めています。なぜか3台もあるPlayStation 5や使わなくなったPC、今だったら高く売れるかもしれないSSDやメモリ……。これはフリマのチャンスかもしれないということで5月17日(日)に実施することになりました。詳しくはテクノエッジをご覧ください。

さて、今回の鵜の目「鷹木」の目は、ビジネスにおける「ハイコンテクスト」と「ローコンテクスト」について考えます。

説明は細かい方が良い?

誰かに仕事を任せたいとき、どれぐらい細かく指示しますか?

手順や方法を含めて、できるだけ細かく説明するのがローコンテクストです。そして目的やビジョンなどをシンプルに伝え、細かい説明を省くのがハイコンテクスト。どちらが適切なのでしょうか?

もちろん、伝える相手によって変わります。前提知識が何もない人にはローコンテクストで丁寧に説明した方がいいし、知識をある程度共有している人には、ハイコンテクストで十分です。

例えば、私がITmediaの記者だった頃、記事は読者に分かりやすいよう言葉を尽くし、ローコンテクストのつもりで書いていました。でも親に「どんな記事を書いているの?」と聞かれて、Windowsの新機能の記事を見せても、「端から端まで全然わからない」と言われる。専門メディアの読者にはローコンテクストであっても、一般の人には十分ハイコンテクストだったわけです。

ハイとローは相対的ですし、求められる状況により変わります。ただ最近気になるのは、ビジネスのコミュニケーションがローコンテクストに寄りすぎているのでは、ということです。

「自分なりのやり方」は、他人には応用できない

私がニュースの配信プラットフォームで働いていた時の話です。あるプロスポーツの公式コンテンツを配信するため、各チームと交渉していました。

その中で1つだけ、配信への理解を得られず苦戦したチームがありました。そこで私は協力者を探し、人脈をたどって説明の機会をもらい、何とか配信をやってもらえることになった……という経緯がありました。

それを経営陣に報告すると、「成功したメソッドを社内で共有したいから、具体的に何をどうやったのか、できるだけローコンテクストな報告書を書いてほしい」と言われたんです。

でもこの仕事のやり方は、自分にしかできないし、このチームにしか通用しない、個別具体的な方法でしかないのです。ストーリーとして面白くても、それを詳しく書けば書くほど「僕とこのチーム特有の話」になってしまう。だから、ストーリーの面白さ以上の教訓はないなと思ったんですよ。

私が細かく書き連ねたとしても、次に担当する人が金科玉条のように「鷹木がこうやったから、同じようにやればできる!」と考えてしまっても困る。その場で、その人なりに考えてやっていくしかないはずです。

細かい指示は、自由を縛る

私は5回転職していています。最初は引継書を事細かに、ローコンテストで書いていました。でも転職を重ねるうちに、だんだん書かなくなりました。書いたところで引き継ぎ相手は同じようにやらないし、その通りにやったところで、私以外の人がやれば同じ結果にはならないからです。

ビジネスの現場でローコンテクストな手順書が行き渡ると、受け取った人はそこから1ミリも出ないよう気を付けるようになってしまいます。個々人の判断や解釈の自由を縛ってしまうんですよね。

そう考えると、仕事の引継書には、細かなやり方ではなく「自分はこういうつもりで働いてきた」という目的やビジョンだけを書くのがいいのかもしれません。具体的なやり方は、引き継いだ人が自分の能力や得意分野を使って設計すればいい。他人のやり方は、なかなか自分のものになりませんから。

私の妻は、PC作業でキーボードショートカットを全く使わないので、横で作業を見ているとイライラして「このショートカットを使えば早いよ」と教えたくてしょうがないんですが、言っても直らないし、ケンカになります。他人のやり方に口出ししたがるのは人のさがですが、相手には相手のやりやすいやり方があります。
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鷹木 創

編集主幹
2002年以来、編集記者や編集長などとしてメディアビジネスに携わる。インプレス、アイティメディアと転職し、2013年にEngadget日本版の編集長に就任。 その後スマートニュースに転職。国内トップクラスの機械学習を活用したアプリ開発会社においてビジネス開発として活躍。2021年からはフリーランスとして独立、IBM、Google などのオウンドメディアをサポートしている。

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