専門家・ビジネスパーソンへのインタビューを安価・手軽にできる「MOビジネスインタビューパネル」

安蔵 靖志

スタートアップ企業に限らず、大企業もスタートアップとオープンイノベーションを進めるなど、新規事業への取り組みがブームになっています。スタンフォード大学経営大学院のチャールズ・A・オライリー教授らが著した『両利きの経営』では、既存事業を継続して深掘りする「知の深化」に加えて、新たな領域へ認知を広げようとする「知の探索」の両方を行える企業、つまり両利きの経営ができる企業ほどイノベーションが生まれ、企業価値を向上できるとしています。

コロナ禍で停滞状況に陥りつつあるとはいえ、今後も、既存の枠を超えた新規事業への取り組みを次々と生み出し、新たな事業の芽を見出していくことが重要になることは間違いありません。

業務の改善や効率化を進める上で重要なものとして「PDCA(計画/実行/評価/改善)サイクル」というキーワードが有名ですが、先の見通しの立たない新規事業の場合、このサイクルを回すのは困難です。

その代わりに注目したいのが、「Observe(観察)」、「Orient(状況判断、方向付け)」、「Decide(意志決定)」、「Act(行動)」の頭文字を取った「OODA(ウーダ)ループ」です。計画立案や行動の前に、まず観察、つまりマーケティング調査などによって市場を把握し、そこから行動を進めていくというものです。

とはいえ、既存の事業領域とは違う新規事業に参入する場合、マーケティング調査を行うのも簡単ではありません。一般消費者を対象にしたアンケート調査による定量調査や、対面やオンラインでのインタビュー調査による定性調査に加え、さらに深掘りした市場調査をしたいという場合に、なかなか対象者が見つからないためです。

こうした、新規事業を開拓したい企業向けにGMOリサーチが提供を開始したのが、ビジネス領域に限定した一次情報や経験知をインタビューで収集できる「MOビジネスインタビューパネル」です。

MOビジネスインタビューパネルは、オンライン上で定性調査を完結できるクラウドソリューションサービス「MO Insights(エムオー インサイツ)byGMO」のサービスメニューとして2021年8月に提供が開始されました。

複数の媒体で構成されるリサーチパネル「Japan Cloud Panel」のモニター約2247万人の中から、自身が就業しているビジネス領域に関するインタビューへの参加意向がある約900万人で構成した「MOビジネスインタビューパネル」に対し、ビジネス領域における1対1のインタビューやグループインタビューなどを実施できるというものです。

GMOリサーチのメディア開発部 鈴木玄氏はMOビジネスインタビューパネルが誕生した経緯について次のように語ります。

GMOリサーチ メディア開発部 鈴木玄氏

「企業が今までとは違う新しい事業領域を展開するとなると、それまでの事業と全く違う領域になるため、知見がないことが往々にしてあります。そういった場合に情報を集める手法として、自分の知り合い経由で知見のある人に当たるということが多くありました。しかし、そのニーズにヒットする人がなかなか見つからないため、インタビュー相手を探すまでに時間がかかってしまっていました。

弊社には『Japan Cloud Panel』というアンケートプラットフォームがあり、さまざまな職種や職位を持つビジネスパーソンが登録されています。そこを活用すれば、今まで全く自分にとっては接点がない人々の中から話を聞きたい人を探し出し、アンケートやインタビューを行えるような手助けができるサービスになっています」(鈴木氏)

ビジネス領域の比較的フラットな定性調査で“一次情報”にアクセスできる

ビジネスの有識者やエキスパートに対してインタビュー調査を行える“ナレッジシェアサービス”は既にありますが、MOビジネスインタビューパネルの強みについて鈴木氏は「経営層から一般社員の方まで幅広く分布しているパネルに対してインタビュー調査が行えること」と語ります。

「元々Japan Cloud Panelは生活者向けインタビューパネルなのですが、登録しているユーザーは15歳以上で、そのほとんどが有職者です。卓越したノウハウや知見があって『自分が教えてあげます』というスタンスの方ではないので、その人しか持ち得ない高度な知見を得るというのには向いていないかもしれません。

とはいえ、仮に経営層の方や、新規商材の開発に関わってきたような方ではなくても、業界の知見はお持ちですので、そういう人たちに対してインタビューを行うことで、『○×総研』のような調査会社が行ったものを利用する“二次的”な調査ではなく、自らが実施した“一次的”な定性調査を取ることができます」(鈴木氏)

MOビジネスインタビューパネルはアドバイザーやエキスパートに比べて発信性は低いものの、一般職員から専門家まで、幅広い専門性を持つビジネスパーソンにインタビューできる点が特徴です

他社には専門性の高いエキスパートにインタビューできるサービスなどもありますが、1人あたりのインタビュー費用が数万円と決して安くはありません。それに対してMOビジネスインタビューパネルは1人あたり数千円からの謝礼で、ターゲットとする業界の状況に詳しい、もしくはある程度把握している人にインタビューを実施できる点が魅力です。

加えて、専門性の高い人一人にインタビューすることよりも、専門性が高くないながらも幅広くインタビューを行うことで、よりフラットに業界を俯瞰できる点にもメリットがあると鈴木氏は語ります。

「発信性の強い方は自分の思いを乗せて話すことで、バイアスがかかってしまう場合があります。そうすると、今後その領域に新規事業として参入しようと思ったときに、その方の意見に影響を受けてしまい、実際の場面に即していない状況からスタートを切ってしまう可能性があるわけです。

弊社に登録されているパネルの皆さんの多くは、発信性はあまり強くありませんが、いろいろな問いに対し、聞かれたら答えるというスタンスだからこそ、その人の主観が入りづらい傾向にあります。そうすることで、非常に現実に即したデータを集めやすい点が、大きな違いになるのではないでしょうか」(鈴木氏)
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安蔵 靖志

Techジャーナリスト/家電エバンジェリスト
家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。

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