親の加齢で知った「元気なうちからやっておく」大切さ
実家でトラブル発生、近所のサポートどころではなかった
そんな我が家も、80代の母が田舎で一人暮らしをしている。元気で病気もなく、車の運転もうまい。地域活動に忙しく、周りに知り合いも多く、生き生きと1人で暮らすアクティブシニアだ。
パソコンの基本操作はでき、これまでトラブルが起きた際もリモートデスクトップで大半は解決できていた。スマートフォンも最初からiPhoneを使ってもらい、操作やトラブル解決は電話やLINEで行えている。我々子ども世代も、年1度の帰省時にWi-Fiまわりをサポートするぐらいで、離れて暮らしていてもそれほど心配していなかった。
しかしこの夏、我々が帰省して家族で一緒に出掛けた際、母が急に意識を失った。考えてみると親が一人暮らしを始めたのは60代のころ。気付けばあっという間に20年が経っていた。これまで元気だった母が倒れたことに驚いた子どもたちが、今後のことを話し合っていた矢先、その母が今度は車で自損事故を起こし、車が廃車になってしまった。本人に怪我もなく、巻き込まれた人もいなかったことに一安心したが、運転免許の自主返納が不可避になった。
本人の感覚は変わっていなくても、加齢で身体機能はどうしても低下する。本人の尊厳を守りながら現実的にどうするべきか、右往左往する日々が始まった。
パソコンの基本操作はでき、これまでトラブルが起きた際もリモートデスクトップで大半は解決できていた。スマートフォンも最初からiPhoneを使ってもらい、操作やトラブル解決は電話やLINEで行えている。我々子ども世代も、年1度の帰省時にWi-Fiまわりをサポートするぐらいで、離れて暮らしていてもそれほど心配していなかった。
しかしこの夏、我々が帰省して家族で一緒に出掛けた際、母が急に意識を失った。考えてみると親が一人暮らしを始めたのは60代のころ。気付けばあっという間に20年が経っていた。これまで元気だった母が倒れたことに驚いた子どもたちが、今後のことを話し合っていた矢先、その母が今度は車で自損事故を起こし、車が廃車になってしまった。本人に怪我もなく、巻き込まれた人もいなかったことに一安心したが、運転免許の自主返納が不可避になった。
本人の感覚は変わっていなくても、加齢で身体機能はどうしても低下する。本人の尊厳を守りながら現実的にどうするべきか、右往左往する日々が始まった。

母の「運転免許自主返納」が現実に。QOLの維持にスマートフォンがより重要になった
中高年の子ども世代は、親が介護未満のうちに対策を
都会で駅から近くに住んでいると想像しづらいが、田舎は車がないと本当に生活できない。実家も最寄り駅まで歩くと30分かかるような場所で、スーパーもコンビニも駅前にしかない。バスも1日数本しかなく、車はまさに足代わりだった。この暑い中、醤油が切れたからと駅まで歩くなど、それこそ無理な話だ。
そんなとき、中年以下の世代なら、スマートフォンからネットスーパーを使う生活に即座に切り替えるだろうが、シニアの場合はそれが簡単ではない。80歳を過ぎてからそれまで使ったことのない方法にトライするのはハードルが高すぎるのだ。今思えば、元気な60代のうちから、強制的に使い慣れさせておくべきだったと思う。
スマートフォンを使いこなせないと、シニアのQOLはどうしても下がる。以前、シニアのスマートフォン講座を主催する団体に取材をしたとき、「元気なうちに、日常を維持するのに必要なサービスを使っておくことが大事」だと繰り返し言っていた。ここまで話してきた筆者だが、「このことだったのか……」と現実になってやっと気付く始末で、近所のシニアを手助けしている場合ではなかった。うるさがられても、家族がなるべく長く自立していられるよう、早いうちから対策しておくべきだったのだ。
そんなとき、中年以下の世代なら、スマートフォンからネットスーパーを使う生活に即座に切り替えるだろうが、シニアの場合はそれが簡単ではない。80歳を過ぎてからそれまで使ったことのない方法にトライするのはハードルが高すぎるのだ。今思えば、元気な60代のうちから、強制的に使い慣れさせておくべきだったと思う。
スマートフォンを使いこなせないと、シニアのQOLはどうしても下がる。以前、シニアのスマートフォン講座を主催する団体に取材をしたとき、「元気なうちに、日常を維持するのに必要なサービスを使っておくことが大事」だと繰り返し言っていた。ここまで話してきた筆者だが、「このことだったのか……」と現実になってやっと気付く始末で、近所のシニアを手助けしている場合ではなかった。うるさがられても、家族がなるべく長く自立していられるよう、早いうちから対策しておくべきだったのだ。

高齢になってから新しいアプリを使うのは大変。元気なうちに使い慣れさせておきたい
シニア向け住宅や老人ホームに入るほどではないが、独居が心配になる「介護未満」の状態でギリギリ過ごしている親世代は少なくない。これを読んでいる中高年の皆さんは、親がまだ元気に自立しているなら、いまのうちにぜひとも対策を始めることを勧めたい。
具体的にはまずタブレットを用意して、買い物と病院予約の専用端末として贈るのはどうだろうか。本人に便利さを知ってもらうことが何より大切だ。親が人生の終盤に過ごす「気楽で自由な時間」のQOLをなるべく下げないための手助けが、その子どもたちである中高年世代にかかっている。そしてその準備は、それほど遠くない未来に来る自分たちの老後の準備にもなるだろう。
具体的にはまずタブレットを用意して、買い物と病院予約の専用端末として贈るのはどうだろうか。本人に便利さを知ってもらうことが何より大切だ。親が人生の終盤に過ごす「気楽で自由な時間」のQOLをなるべく下げないための手助けが、その子どもたちである中高年世代にかかっている。そしてその準備は、それほど遠くない未来に来る自分たちの老後の準備にもなるだろう。

今度の田舎の帰省には、地元のスーパーの買い物アプリとかかりつけの病院の予約アプリを入れたタブレットをぜひお土産に

赤池 淳子
編集・ライター
1973年東京都生まれ。IT系出版社を経て編集者兼ライターに。雑誌やWeb媒体での執筆・編集を行う。家電、旅行、まちづくり、子どものプログラミング教育などのテーマを追いかけている。