今回の津波は高さが200メートルという、都心にそびえる高層ビルほどの高さのものでしたが、過去にはよく似たメカニズムで想像を絶する巨大津波が起こったことがありました。

1958年に米アラスカ州にあるリツヤ湾で発生した観測史上最大の大津波は、今回のグリーンランドの震動と同じように、入り組んだフィヨルドの海に面した陸地斜面から、とてつもない量の土砂や氷塊が崩落して発生したものでした。

今回のグリーンランドの例との違いは、崩落が、温暖化で氷河が緩んだことによるものではなく、マグニチュード7.7という大きな地震によって引き起こされたこと。この地震によって、リツヤ湾に面した山肌が幅1キロメートルにわたって崩落、9000万トンもの氷と土砂が湾になだれ込みました。そして発生した巨大な波は対岸の斜面を海抜524メートルの高さまで駆け登ったとされています。

最近では2017年に発生したグリーンランド北西部カラット・フィヨルドでの津波の事例があります。このときは、雪崩が津波を引き起こし、近隣の村が浸水被害を受けて4人が死亡しました。

ほかにも、グリーンランド東海岸で発生した高さ100メートルを超える巨大津波がヨーロッパに到達した例もあり、問題の影響範囲はグリーンランドだけに留まらなくなりつつあります。

今回の研究に関わっていない西ノルウェー応用科学大学の地質学者ポーラ・スヌーク氏は2023年9月にグリーンランドで起こった事象について「気候温暖化のが進んだことにより、北極の大きな山の斜面が不安定化し続けていることを改めて示すものだ」と述べています。