手からツルッと滑らせて食器を割りそうになるたびに、私はトーベ・ヤンソンの不朽の名作・ムーミン童話シリーズを思い出します。ムーミン童話の世界では天変地異がちょいちょい起こります。それにシンクロするように家庭内のトラブルも描かれるんです。そういういろんなカタストロフィに対するムーミン谷の人たちの姿勢が、子どもの頃から私はとても好きです。

で、「食器が割れる」という惨事がムーミン谷のご家庭でも発生するわけですが、そんなとき彼らはどう反応するでしょう。

たとえば「ムーミン谷の彗星」では、ムーミンパパが夜中に「りんご酒」を戸棚からこっそり出そうとして、誤って「はち（鉢）」をガラガラガチャンと割ってしまいます。その物音でびっくり目を覚ましたムーミンママは、ムーミンパパのもとに駆けつけると、こんなふうに言うのです。

「そんなの、われたほうがよろしいわ。とってもきたないおはちでしたもの。いすの上へあがれば、らくにおろせますの。わたしにもグラスを一つとってくださいな。」
（ムーミン谷の彗星　第1章・下村隆一訳　33ページ）

器が大きい！！！ しかもムーミンパパと一緒にりんご酒を楽しもうとすらしている！ ベストアンサー以上のすばらしい声がけだよ、寝起きなのにすごい。ムーミンママってなんて大らかなんでしょう（ちなみにムーミンパパも「ムーミン谷の夏祭り」でお気に入りのハンモックが洪水に流されたときに似たようなことを言います。似たもの夫婦！）。

このエピソードを読んで感動しておよそ30年経ちましたが、今でも割れたお皿やコップを見ると、口では「いいの」と言いつつ顔は全然「いいの」って表情にはならないし、1カ月くらいはクヨクヨ引きずります。そう、私はムーミンママにはなれないのです。だから毎日出番があるご飯茶碗は頑丈な備前焼に変えました（備前焼は手に馴染んでとてもいいですよ。真っ白なご飯と深い茶色のコントラストがキレイで、お水に触れると鈍く光るところも好き！）。

自分のムーミンママじゃないところをよく自覚していると、なにかと頑丈な食器に目が行きます。そして、願わくば美しいものが欲しい。そんな私のニーズにKINJO JAPANのシリコーンゴム製の美麗なグラス「KINJO JAPAN E1」が当てはまっているかも？ ということで、使ってみました。KINJO JAPANは、大阪府八尾市にある錦城護謨（ゴム）株式会社が立ち上げたオリジナルブランドです。

価格は1つ4950円です。百貨店やセレクトショップでも取り扱いが増えてきているようですが、私は直販サイトでオーダーしました。立派な化粧箱に入って届くので贈り物にもよさそう。

ボートやビーチリゾートの浜辺で出される飲み物は、たいていプラスチック製のグラスに入っています。頑丈なビールグラスはガラス製の場合もありますが、繊細なワイングラスやカクテルグラスにお目にかかることは滅多にありません。や、ホテルの事情やお気遣いもわかるんですよ。プールサイドでツルッと滑るかもしれないし、プールの水中にわざわざバーの椅子を用意しているホテルもあるし、海風がどっと吹くかもしれない、しかもゲストはヘソ出しのご機嫌な酔っ払い。絶対危ない。

だからプラスチック製のグラスで安心してマティーニを飲んでいますが、プラスチックのぶ厚いグラスは口当たりがよくないし、グラスの表面についた細かなキズも気になる。

そのあたりの「割れないから安心だが、ちょっとイマイチ」なところを、KINJO JAPAN E1は徹底してクリアしています。まず外見。

もうピッカピカ。切り子ガラスのようなカットのおかげでキラキラまぶしい。アタマでは「これはシリコーン製、ガラスではないのよ」とわかっていても、床に落とすと超ドキドキする（「ばいーん」みたいな音を立ててバウンドして無傷でした）。

グッと握るとへコみますが、力を緩めるとすぐに元の形に戻ります。硬めのゴムボールのような質感です。

一番感動したのは飲み口。とても薄く仕上がっています。ガラスと比べても遜色なし。 冷たいお水がとてもおいしいので、夜中に目を覚ましてボーッとお水を飲むときにも使っています。割れなくて安心だし飲み口も心地よい。

お手入れ方法は、普通のコップと同じように中性洗剤で洗って水ですすげばOK。ちなみに公式サイトによると食洗機にも入れられるとのことですが、変色の可能性があるとも書かれています。

オープンエアで割れないキレイなグラスとドリンクを楽しむ