日本でも起こり得る?水害が変える住まい選び
日本では、気候変動による住まい選びの変化と低所得層の立ち退きが結びついた「気候ジェントリフィケーション」が広く認識される事例は、現時点では限られています。 持ち家を手に入れると、欧米ほど頻繁には引っ越さない、という暮らし方の違いも理由の1つかもしれません。
しかし近年、急な豪雨や大型台風による風水害は増える傾向にあります。2026年8月だけでも、千葉、富山・石川、福井などで線状降水帯が発生し、河川の水が堤防を越えて市街地に流れ込んだり、下水や排水溝から水があふれ出したりして、家屋の浸水や道路の冠水が相次ぎました。
千葉の豪雨では、市街地にあふれた水で多くの車両が動けなくなり、一時3000台以上が路上に取り残されました。マンションの地下に水が流れ込み、配電設備や水をくみ上げるポンプが水没してしまった例も報じられています。
住まい選びの前提は、実はすでに変わり始めているのです。冒頭で触れた重要事項説明でのハザードマップの説明義務化に加え、火災保険でも、地域の水害リスクに応じて水災補償の保険料に差がつく仕組みが導入されました。
水害が毎年のように発生すれば、利便性だけでなく「水に浸からない土地かどうか」が、これまで以上に重視されるようになるでしょう。手頃な高台や丘陵地に移り住みたい人が増えれば、その地域の地価や家賃がじわじわと上がっていくこともあり得ます。
しかし近年、急な豪雨や大型台風による風水害は増える傾向にあります。2026年8月だけでも、千葉、富山・石川、福井などで線状降水帯が発生し、河川の水が堤防を越えて市街地に流れ込んだり、下水や排水溝から水があふれ出したりして、家屋の浸水や道路の冠水が相次ぎました。
千葉の豪雨では、市街地にあふれた水で多くの車両が動けなくなり、一時3000台以上が路上に取り残されました。マンションの地下に水が流れ込み、配電設備や水をくみ上げるポンプが水没してしまった例も報じられています。
住まい選びの前提は、実はすでに変わり始めているのです。冒頭で触れた重要事項説明でのハザードマップの説明義務化に加え、火災保険でも、地域の水害リスクに応じて水災補償の保険料に差がつく仕組みが導入されました。
水害が毎年のように発生すれば、利便性だけでなく「水に浸からない土地かどうか」が、これまで以上に重視されるようになるでしょう。手頃な高台や丘陵地に移り住みたい人が増えれば、その地域の地価や家賃がじわじわと上がっていくこともあり得ます。
東京の「高台まちづくり」が抱えるジレンマ
東京では、荒川や江戸川周辺の海抜ゼロメートル地帯を中心に、大規模な河川氾濫が起きたときに避難できる高台を設置する「高台まちづくり」が進められています。
軸となるのは、非常に幅の広い高規格堤防(スーパー堤防)の整備です。さらに再開発による避難スペースの確保、公園の高台化、建物や道路・デッキをつないだ避難ネットワークの構築など、複数の手法を組み合わせる方法が検討され、一部で実施されています。
軸となるのは、非常に幅の広い高規格堤防(スーパー堤防)の整備です。さらに再開発による避難スペースの確保、公園の高台化、建物や道路・デッキをつないだ避難ネットワークの構築など、複数の手法を組み合わせる方法が検討され、一部で実施されています。
高台まちづくりのイメージ図(出典:国土交通省)
防災の観点から見れば、よく考えられた、合理的な構想です。ただ、新しく構築される街がどのような所得層の人を想定するかによっては、もとからそこで暮らしてきた人々が、戻って住み続けにくくなる可能性も否定できません。国土交通省の資料でも、「住民負担の軽減となる移転方策」が課題の1つに挙げられています。
東京ではすでに、2000年代以降の都市再生政策や規制緩和を背景に、高級マンションや大型商業施設の建設が進み、古い町並みが姿を変えていく一般的なジェントリフィケーションが続いてきました。東京圏に住む年収1000万円以上の人は160万人を超えるとも伝えられています。
また気候ジェントリフィケーションに関する研究でも、気候変動への適応策が長期的には住宅格差や社会的不平等を拡大しかねない点は、重要な論点の1つとされています。バルセロナの研究者が、緑化や断熱化への投資だけでは不十分だと指摘したのと同じ構図です。
東京ではすでに、2000年代以降の都市再生政策や規制緩和を背景に、高級マンションや大型商業施設の建設が進み、古い町並みが姿を変えていく一般的なジェントリフィケーションが続いてきました。東京圏に住む年収1000万円以上の人は160万人を超えるとも伝えられています。
また気候ジェントリフィケーションに関する研究でも、気候変動への適応策が長期的には住宅格差や社会的不平等を拡大しかねない点は、重要な論点の1つとされています。バルセロナの研究者が、緑化や断熱化への投資だけでは不十分だと指摘したのと同じ構図です。
誰もが安心して暮らし続けられる街へ
東京の高台まちづくりは、それ自体が気候ジェントリフィケーションというわけではありません。しかし、気候変動への適応と都市再開発が結びついたとき、将来の住宅格差を広げる可能性はあります。その意味で、気候ジェントリフィケーションを身近な問題として考えるための興味深い事例といえるでしょう。
世界の平均気温が近い将来に以前の水準へ戻る見込みは小さく、異常気象や災害の深刻化は、これからも不動産の価値や人々の住まい選びを変えていくはずです。世代を超えてその土地で暮らしてきた人々が、家賃や税金、生活費の上昇で立ち退きを迫られれば、地域に根付いた文化も失われていきます。
防災や環境対策の恩恵を、もとから暮らす人も含めて誰もが受けられるようにするには、行政、研究者、そして地域のコミュニティが協力し、解決策を探っていくことが欠かせません。次に住まいを探すとき、ハザードマップの色だけでなく、その街がこれからどう変わろうとしているのかにも、ぜひ目を向けてみてください。
世界の平均気温が近い将来に以前の水準へ戻る見込みは小さく、異常気象や災害の深刻化は、これからも不動産の価値や人々の住まい選びを変えていくはずです。世代を超えてその土地で暮らしてきた人々が、家賃や税金、生活費の上昇で立ち退きを迫られれば、地域に根付いた文化も失われていきます。
防災や環境対策の恩恵を、もとから暮らす人も含めて誰もが受けられるようにするには、行政、研究者、そして地域のコミュニティが協力し、解決策を探っていくことが欠かせません。次に住まいを探すとき、ハザードマップの色だけでなく、その街がこれからどう変わろうとしているのかにも、ぜひ目を向けてみてください。

Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi













