家を借りたり買ったりするとき、ハザードマップで浸水や土砂災害のリスクを確かめるのは、もはや珍しいことではなくなりました。2020年からは、不動産取引の重要事項説明でこうしたリスクを説明することも義務づけられています。
では、「災害に強い場所」に住みたい人が増えたら、その土地にもともと暮らしていた人たちはどうなるのでしょうか。いま欧米で注目されている「気候ジェントリフィケーション」は、まさにこの問いに関わる現象です。
冒頭画像:ハリケーン・カトリーナ通過後のニューオーリンズ(出典:NOAA)
では、「災害に強い場所」に住みたい人が増えたら、その土地にもともと暮らしていた人たちはどうなるのでしょうか。いま欧米で注目されている「気候ジェントリフィケーション」は、まさにこの問いに関わる現象です。
冒頭画像:ハリケーン・カトリーナ通過後のニューオーリンズ(出典:NOAA)
気候変動に伴うジェントリフィケーション
「ジェントリフィケーション」は直訳すると「紳士化」。英国の社会学者ルース・グラスが1964年に提唱したこの言葉は、労働者階級が暮らしていた地域に中流・上流階級の人々が流入し、もとの住民が家賃や生活費の上昇によって押し出されていく現象を指すものです。1960年代に荒廃していたニューヨーク・マンハッタンのソーホー地区が、家賃の安さなどから芸術家の街として注目されるようになり、やがて高級化していった例などが知られています。
街の再生は、治安の改善や商業の活性化をもたらす一方、低所得層や移民など弱い立場の人々が住み慣れた土地を離れざるを得なくなる負の側面もあり、批判的に語られることも少なくありません。
2000年代以降、従来とは違うパターンのジェントリフィケーションも注目されるようになりました。その1つが「気候ジェントリフィケーション(Climate Gentrification)」です。気候変動そのものや、それに対する適応策によって住宅需要や不動産価値が変化し、低所得層など従来の住民が住み続けることが難しくなる現象を指します。
気候ジェントリフィケーションには、大きく分けて2つのパターンがあるとされます。1つは、洪水や海面上昇のリスクを避けて人々が高台へ移り、もともと低所得層が暮らしていた地域が高級化するケース。もう1つは、緑地の整備や防災インフラといった適応策によって、その地域の不動産価値が上がるケースです。「自然環境に配慮した持続可能な街」をめざした都市再生が、かえって元の住民にとって住みにくい街を生んでしまうこともあるのです。
前者の代表とされるのが、米・フロリダ州マイアミの例です。ビーチの美しさや州所得税がないことなどにひかれた若い世代をの移住者が増え、経済的にも活況を呈してきましたが、海面上昇や洪水への懸念から、低地のウォーターフロントよりも標高の高い内陸部の土地に注目が集まるようになりました。
その結果、歴史的に低所得の黒人・ヒスパニック系住民が暮らしてきたリトルハイチやリバティシティなどでも不動産投資や再開発が進み、家賃の上昇や住民の立ち退きが問題になっていると伝えられています。
街の再生は、治安の改善や商業の活性化をもたらす一方、低所得層や移民など弱い立場の人々が住み慣れた土地を離れざるを得なくなる負の側面もあり、批判的に語られることも少なくありません。
2000年代以降、従来とは違うパターンのジェントリフィケーションも注目されるようになりました。その1つが「気候ジェントリフィケーション(Climate Gentrification)」です。気候変動そのものや、それに対する適応策によって住宅需要や不動産価値が変化し、低所得層など従来の住民が住み続けることが難しくなる現象を指します。
気候ジェントリフィケーションには、大きく分けて2つのパターンがあるとされます。1つは、洪水や海面上昇のリスクを避けて人々が高台へ移り、もともと低所得層が暮らしていた地域が高級化するケース。もう1つは、緑地の整備や防災インフラといった適応策によって、その地域の不動産価値が上がるケースです。「自然環境に配慮した持続可能な街」をめざした都市再生が、かえって元の住民にとって住みにくい街を生んでしまうこともあるのです。
前者の代表とされるのが、米・フロリダ州マイアミの例です。ビーチの美しさや州所得税がないことなどにひかれた若い世代をの移住者が増え、経済的にも活況を呈してきましたが、海面上昇や洪水への懸念から、低地のウォーターフロントよりも標高の高い内陸部の土地に注目が集まるようになりました。
その結果、歴史的に低所得の黒人・ヒスパニック系住民が暮らしてきたリトルハイチやリバティシティなどでも不動産投資や再開発が進み、家賃の上昇や住民の立ち退きが問題になっていると伝えられています。
世界の平均海面水位の変化を視覚的に表示したデモ(出典:NASA Scientific Visualization Studio)
猛暑の欧州で可視化された気候ジェントリフィケーションのリスク
猛暑が深刻化する欧州でも、気候ジェントリフィケーションによる問題が指摘されています。スペイン・バルセロナ自治大学の環境科学技術研究所(ICTA-UAB)のプロジェクト「ClimateJusticeReady」は2026年7月、バルセロナ都市圏における気候ジェントリフィケーションを調査し、そのリスクを数値化して地図上に表示するウェブページを無料公開しました。
気候ジェントリフィケーションに対する脆弱(ぜいじゃく)性指数マップ(出典:バルセロナ自治大学 環境科学技術研究所 Barcelona Lab for Urban Environmental Justice and Sustainability)
地図で気候ジェントリフィケーションのリスクが高いとされたのは、 緑地が近く、人口密度が低く、交通の便も比較的良い郊外の地域です。従来のジェントリフィケーションとは縁が薄く、古くからの住民が多い地域ですが、都市中心部の暑さや住宅費の高騰を避けたい人々の移住先となる可能性があるといいます。
注目したいのは、研究者らの提言です。自治体が緑地や建物の断熱化に投資するだけでは、その地域が富裕層や不動産投資家にとって魅力的になり、かえってジェントリフィケーションを加速させかねない。そのため、家賃の高騰から住民を守る住宅政策もあわせて考える必要があるというのです。この指摘は、日本の防災まちづくりを考えるうえでも示唆に富んでいます。
注目したいのは、研究者らの提言です。自治体が緑地や建物の断熱化に投資するだけでは、その地域が富裕層や不動産投資家にとって魅力的になり、かえってジェントリフィケーションを加速させかねない。そのため、家賃の高騰から住民を守る住宅政策もあわせて考える必要があるというのです。この指摘は、日本の防災まちづくりを考えるうえでも示唆に富んでいます。

Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi













