認知度は9割以上!? SDGsの 個人・企業の取り組み状況は?

安蔵 靖志

GMOインターネットグループSDGsネットサービス
最近、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアで「SDGs(持続可能な開発目標)」というキーワードを目や耳にするようになったと感じることはないでしょうか? SDGsとは、より良い世界の実現を目指すために国連サミットで採択された国際目標です。環境保護や国際支援など17項目の目標が設定されており、政府はもちろん、企業や個人も取り組み対象となっています。

そこで、GMOリサーチが運営する会員登録数約70万人のアンケートサイト「infoQ」では、SDGsの認知度から個人・家族や企業の取り組み状況、SDGsにつながる行動などについて、全国15~99歳の男女2000人を対象にアンケート調査を実施しました。この調査を元にSDGsの取り組みの実態を分析していきます。

SDGsの認知度認知度は9割以上! 具体的な目標の周知や行動を促すには課題も

【Q1.】SDGsの認知度

持続可能な開発目標を掲げるSDGsですが、実際にどの程度の人が知っているのでしょうか。SDGsの認知度をたずねる質問では、SDGsを「聞いたことがない」と回答した割合は10%を切っており、90%以上の人は聞いたことがあることが分かりました。

「SDGsの認知度」調査結果

聞いたことがあると答えた人の内訳を見ると、「概要を知っている」「言葉は聞いたことがある」が約8割を占める一方、「目標の項目を知っている」と回答した人は11.4%と低くなっています。

年代別で見ると、10代の割合がとりわけ高くなっていました。これは、学校でSDGsについて学んでいる影響が大きいと考えられます。

SDGsの認知度は高まっているとはいえ、目標まで知っている人や、具体的な行動に移している人はあまり多くないようです。

最も関心が高いのは「経済」45.7%! 「差別」は17.2%で関心に差がある結果に

【Q2.】関心のある社会問題について

SDGsは持続可能な社会を実現できるように、2015年の国連サミットで採択されたもので、2030年までに目指したい世界の姿を掲げた国際目標です。

国連サミットではSDGsの17項目が持続可能な社会の実現に必要だと考えられていますが、実際に多くの人はどのような社会問題に関心を持っているのでしょうか。

「関心のある社会問題について」調査結果

複数回答で関心のある社会問題を聞いたところ、「経済」45.7%、「世界情勢」41.0%、「エネルギー問題」30.6%といった項目が上位にランクインしました。経済やエネルギー問題など、身近な生活と密接し、金銭的な影響を感じやすい項目に多くの人が注目しているようです。

一方で「教育・福祉」22.1%、「差別」17.2%といった項目は低い結果となっています。「教育・福祉」には、生活困窮者への生活支援などの社会保障も含まれますが、現状ではあまり高い関心を集めていないようです。

年代別に見たデータでは、最も多かった「経済」への関心は20代以降、年齢が上がるにつれて高くなる傾向がありました。

これは収入の増加に伴い、仕事への影響や資産運用、市場の動向に関心を持つ人が増えるからだと推測されます。

年齢とともに目標への関心が高くなる一方、ジェンダー問題では若い世代が高い関心

【Q3.】SDGs17の目標で関心の高い項目

この設問は以下SDGs17の目標のうち、関心のある目標を聞きました。

SDGs17の目標

「SDGs17の目標で関心の高い項目」調査結果

上記グラフから全体的な傾向として、年齢が上がるほど目標への関心が高くなっているのが分かります。

SDGsにおける17の目標のうち、全世代で最も多かった回答は「すべての人に健康と福祉を(42.0%)」、次いで「気候変動に具体的な対策を(37.5%)」でした。社会保障・福祉や環境保護に対する意識が特に高いことが分かります。

先ほどの社会問題への意識では、経済や世界情勢への関心が強く表れていました。SDGsでも「働きがいも経済成長も」や「産業と技術革新の基盤をつくろう」といった目標がありますが、それぞれ12位、16位と低い順位にとどまっています。これは、SDGsを「福祉」や「環境問題」に関係するものだととらえる人が多い可能性があります。

「ジェンダー平等を実現しよう」では、全世代での順位は14位と高くありませんでしたが、10代では1位を記録しており、若い世代で意識が高くなっています。年代による意識差が表れている項目といえるでしょう。

関心の低い項目にジェンダー問題……その原因は?

【Q4.】SDGs 17の目標で関心の低い項目

SDGsにおける17の目標のうち、関心の低い項目について聞きました。

「SDGs 17の目標で関心の低い項目」調査結果

回答では「ジェンダー平等を実現しよう(11.9%)」に関心が薄いと答える人が多く、特に上の年代でその傾向が高いと推測されます。具体的には以下のような理由が挙げられていました。

 ・何でも平等という考えには賛同できない
 ・男女の差はあって当然だから
 ・何が平等なのか、価値観の違いが大きいから
 ・世界的には必要なことだが、持続可能な目標の項目に入れるものではないと思っている

ジェンダー平等に対する考え方も人それぞれであり、そもそもジェンダー平等をSDGsの目標とすることに懐疑的な人も一定数いるために、関心が薄い項目のトップに挙げられていると考えられます。

関心が低い17の目標の第2位は「パートナーシップで目標を達成しよう」でした。目標の意味は発展途上国への積極的な支援や国際的な開発協力のことを指しているのですが、文字だけ見ると抽象的で内容が分かりにくいため、関心が低くなっていると推測されます。

関心の低い項目を尋ねる質問でしたが、回答自体は「当てはまる項目はない(42.7%)」が最も多く、SDGsを認知している人の大半はすべての項目が重要だと感じているようです。

【Pick Up】SDGsの印象

SDGsという国際目標について、どのような印象を持っているか、好意的な意見と否定的な意見に分けて紹介していきます。

●好意的な意見
 ・最近テレビなどで大きく取り上げられるようになって、浸透してきたと感じる
 ・小さなことからこつこつと積み重ねることができるので、そのことを大切にしていきたい
 ・ひとつの地球ということを真剣に考えた時に、シンプルで共通認識を抱きやすいよい取り組みだと思っている
 ・自分たちにもできる事があるかも知れないと考えるキッカケになったと思う
 ・非常によいが、項目によって優先度は違うはずと思う
 ・世界全体で取り組むという目標を明確に示してくれるのは、意識する人が増えるのでよい印象

●否定的な意見
 ・規模が大きくて個人でできることはなさそう
 ・少し項目を絞ってもっとわかりやすい表現で伝えないと難しいと敬遠してしまう人が多くいるのではと思う
 ・まだまだ始まったばかりで成果は出ていない
 ・目標や志を持つのはよいことだが流行や押し付けと紙一重のように見える
 ・本当にやっている人より、イメージを利用している人の方が多いと思う
 ・個人一人一人が、具体的に何をすべきなのかを分かりやすく説明していく必要があると思う

以上のようにSDGsについてさまざまな意見があり、目標に関してあいまいだという印象を持っている人も多いようです。政府も『SDGsアクションプラン2022』など、基本的な指針を示してはいるものの、本格的に浸透していくのはこれからといえるでしょう。

SDGsに「取り組んでいる」は18.8% 66.0%はSDGsの目標に前向きという結果

【Q5.】個人または家族でSDGsに取り組んでいるか

個人や家庭内でどの程度SDGsに取り組んでいるかを聞きました。

「個人または家族でSDGsに取り組んでいるか」調査結果

一番多い回答は「取り組む予定はないが今後取り組みたい(34.3%)」で、次に「取り組む予定はない(34.0%)」でした。

「取り組む予定はない(34.0%)」という否定的な回答が多い背景には、「個人で取り組んでも意味がない」と考えている人や、「強制力がないと効果がない」と考えている人が一定数いることが考えられます。

現段階で取り組みへの実施有無を問わず、取り組みへ前向きな回答は66.0%あり、その中で「取り組んでいる」人は18.8%でした。

多くの人が、日常生活で「水や電気の無駄遣いをなくす」「不必要なものを購入しない」「買い物にはマイバッグを持参する」といった行動をしていると思います。しかし、こうした行動をSDGsの取り組みと認識していない人も一定数いるため、低水準にとどまっていると考えられます。

年代別でみると、年齢が上がるほど「取り組んでいる」の項目が増加していました。実際の取り組みでも、これまでと同様に上の年代ほどSDGsに対する意識が高いようです。

個人の取り組みでは、消費行動や環境保護への意識が強い

【Q6.】個人または家族で取り組んでいるSDGsの項目

前問(個人または家族でSDGsに取り組んでいるか)で、SDGsに「取り組んでいる」と回答した人に、当てはまる目標を複数回答で質問しました。

「個人または家族で取り組んでいるSDGsの項目」調査結果

その結果「つくる責任つかう責任(37.8%)」が最も多くなっています。具体的な取り組み例としては「食べ残しをしない」や「節水を心がける」といった行動が当てはまり、実生活で行動に移しやすいことが上位になっている理由と言えるでしょう。

他にも「海の豊かさを守ろう」「気候変動に具体的な対策を」なども上位項目であり、環境保護に関する目標に積極的な様子が見られます。

環境保護に対し自分が行っている活動を聞いたところ、以下のような回答がありました。
 ・太陽光発電事業を副業としている
 ・ユニセフ、UNHCR、世界食糧計画に毎月寄付している
 ・節電に努めるとともに、なるべく再生可能エネルギーを使うようにしている
 ・環境問題として取り上げられているプラスチックゴミなどの使用を控えたり、分別廃棄をしたりするよう徹底している
 ・貧困が原因で教育機会に恵まれない学生への学習支援
 ・海に近い地域なので海岸のゴミ拾いや清掃を定期的にしている

このようにゴミの分別や食品ロスの削減など、身近な取り組みが多く挙げられていました。

企業・団体では生産・エネルギー問題・ジェンダー平等の取り組みが多い

【Q7.】あなたの職場・団体が取り組んでいるSDGsの項目

自分の職場・所属団体がSDGsに取り組んでいるか質問した結果、「はい」という回答は15.4%あり、個人で取り組んでいる人(18.8%)と比較するとやや少ない結果でした。

「あなたの職場・団体が取り組んでいるSDGsの項目」調査結果

自分の職場・所属団体がSDGsに取り組んでいると答えた人に、その活動に当てはまる目標を複数回答で質問したところ、「つくる責任つかう責任(25.6%)」と、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに(25.3%)」が上位にランクインし、個人・家族での取り組みと類似した結果になりました。

とはいえ最も多かった「つくる責任つかう責任」は、個人・家族の場合は37.8%でしたが、職場・所属団体だと25.6%となり、やや少ない印象です。
人的・資金的に余力のある大企業はSDGsに取り組む余裕があるものの、中小企業ではそこまでのリソースが割けない現状があるということかもしれません。

また、職場・所属団体の取り組みでは、「働きがいも経済成長も」や「ジェンダー平等を実現しよう」など、個人・家族の取り組みとは違った項目が上位に上がっています。
したがって働き方の見直しや、ジェンダー平等の実現に意欲的な企業が増えていると考えられます。

職場・所属している団体が行っている活動の具体例を紹介します。

 ・車やトラックの停止中のエンジンを切る
 ・着なくなった服や使わなくなった雑貨を集め、リサイクルショップに譲渡している
 ・ペットボトルが使用禁止になり、自動販売機は缶ボトルのみの販売をしている
 ・電気自動車の製造販売を通じたカーボンニュートラルの実現
 ・再生材を利用した設計
 ・ジェンダーに関する講演会
 ・日本赤十字社などの団体への寄付 ・募金
 ・繰り返し利用可能な袋を渡す。不必要なラッピングを行わない

職場・所属団体だからこそ、規模の大きい取り組みも多いですが、「車やトラックの停止中のエンジンを切る」「不必要なラッピングを行わない」といった行動は個人でも参考にできる部分ではないでしょうか。

意外と取り組みができている? SDGsに当てはまる身近な行動とは

【Q8.】SDGsに当てはまる行動

最後に普段SDGsに当てはまる行動をしているか、複数回答で聞きました。

「SDGsに当てはまる行動」調査結果

上記グラフ内の項目はどれもSDGsに当てはまる行動ですが、「当てはまる項目はない」と、上記の行動をいずれも行っていないと回答した人は、わずか9.2%でした。

先ほど「個人または家族でSDGsに取り組んでいるか」の質問では、「取り組んでいる」と回答した人は18.8%と少数でしたが、具体例を挙げて質問してみると、90.8%の人はSDGsに当てはまる何らかの行動をしているようです。

SDGsというと、世界規模で取り組む課題と考え、ハードルが高いものと感じている人が多いのかもしれませんが、実はグラフの項目にあるような身近な行動も、SDGsの取り組みになっているのです。

具体的な項目を見ていくと「食べ残しをしない」「電気をこまめに消す」「エコバッグ・マイボトルを使う」といった、日常生活で取り組みやすい活動が上位にきており、無駄な消費を減らすことを心がけている人が多いようです。

その他「賞味期限が間近の食品を買う」は、選ぶことを避ける人も多そうですが、39.8%の人が取り組んでいると回答しており、意外と積極的に取り組まれている印象を持つのではないでしょうか。
ここまでSDGsについて認知度や関心の高い項目、個人・企業での取り組みなどに関するアンケート結果を紹介しました。

SDGsは17の目標から構成されていますが、例えばジェンダー平等など、企業・組織では関心が高い一方、個人ではさほど意識されないなど、取り組む属性により意識に違いが見られました。

個人や家族では、日頃から意識的にSDGsに取り組んでいると回答した人は多くありませんでしたが、「食べ残しをしない」など日常生活で実践できる行動には、意外と普段から取り組めている実態も見えてきました。

SDGsの目標は持続可能な社会を作るために必要な取り組みだと思う反面、多くを求められると窮屈に感じる人もいるでしょう。しかし、SDGsの目標自体には賛同できるものが多いはず。

「何のために行うか」を意識して目標に取り組めば、個人・企業ともに行動に移しやすいのではないでしょうか?

【調査概要】
・調査方法:infoQでwebアンケート実施
・調査期間:2022年2月3日~2022年2月6日
・有効回答:2000サンプル
・調査対象:全国15~99歳男女

安蔵 靖志

Techジャーナリスト/家電エバンジェリスト
家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。

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