GMOプライム・ストラテジーの法人RAG「GMO AI RAG」提供開始、今秋にはMCP標準搭載でOSS公開予定

鷲木 造

AIGMOインターネットグループ
GMOインターネットグループのGMOプライム・ストラテジーは6月30日、法人向けRAG(検索拡張生成)ソフトウェア「GMO AI RAG」のEnterprise版の提供を開始した。

同社が開発してきた企業向けRAG(Retrieval-Augmented Generation、社内文書などを検索・参照しながらAIが回答する技術)基盤「MAGATAMA Stack」をベースとした製品で、オンプレミス環境(クラウドを使わない自社サーバー)での運用に対応するほか、秋にはOSS版の公開も予定している。

生成AIの業務利用が広がるなか、企業では社内規程やマニュアル、議事録などをAIに参照させたいというニーズが高まっている。一方で、一般的な大規模言語モデル(LLM)は社内文書を学習しておらず、そのままでは企業固有の情報に基づく回答はできない。この課題を補う技術として普及が進んでいるのがRAGだ。

法人向けRAG市場では多くの製品が登場しているが、各社が差別化を図るポイントはさまざま。GMO AI RAGは、オンプレミス対応やMCP(Model Context Protocol)を標準搭載し、さらにOSS公開が特徴になる。

権限管理とオンプレミスに対応した企業向けRAG

GMO AI RAGは、社内のマニュアルや規程、議事録などを取り込み、社員やAIエージェントからの問い合わせに対して、社内情報を参照しながら回答するRAGソフトウェア。Microsoft SharePoint、Google Drive、Boxなどのストレージサービスと連携できるほか、部門ごとにアクセス権限を設定可能な「情報コレクション」機能を備える。利用するLLMやトークン上限も部門単位で管理でき、用途に応じた運用を行える。

またAnthropicやOpenAI、GoogleなどのクラウドLLMに加え、ローカルLLMとも組み合わせて利用可能。クラウド環境だけでなくオンプレミス環境にも対応しており、企業のセキュリティポリシーや運用要件に応じてシステム構成を選択できる。

オンプレミス対応が求められる理由

法人向けRAG市場ではクラウドサービスが主流となっている一方、すべての企業がクラウド利用を前提にできるわけではない。特に金融機関や医療機関、製造業、公共分野などでは、機密情報や設計データを外部クラウドへ保存できないケースもある。このため、社内ネットワークだけでAIを運用したいというニーズは依然として存在する。

GMO AI RAGは、クラウドLLMだけでなくローカルLLMとも組み合わせられる構成を採用しており、自社サーバー内でRAG環境を構築したい企業にも対応する。オンプレミス版の初期費用は、環境構築費40万円から+導入支援費160万円からとしている。

MCP標準搭載でAIエージェントとの連携を強化

本製品の特徴の1つが、MCP(Model Context Protocol)サーバーを標準搭載している点だ。MCPはAnthropicが提唱したプロトコル(通信規約)で、AIエージェントと外部システムを標準的な方法で接続するための仕様として利用が広がっている。従来はAIサービスごとに個別のAPI連携を構築するケースが多かったが、MCPへの対応が進めば、共通のインターフェースを介して複数のAIから同じ情報源を利用しやすくなる。

近年は、ClaudeやMicrosoft CopilotなどのAIが社内システムや各種ツールと連携しながら業務を支援するケースも増えている。AIが必要な情報をどこから取得するかが重要になるなか、RAGはAIエージェントへ社内ナレッジを提供する役割も担うようになりつつある。

GMO AI RAGでは、外部のAIエージェントから社内ナレッジを取得するバックエンドとして利用できる設計を採用。既存のAIサービスと組み合わせながら社内情報を活用できる点も特徴だ。

検索精度を高める「TunedRAG」

有償オプションとして提供される「TunedRAG」は、検索精度を高めるための機能だ。

一般的なRAGでは、質問の内容と意味が近い文書を探す「ベクトル検索」とキーワード検索を組み合わせて関連文書を抽出する。しかし、固有名詞や類義語、言い換え表現などでは期待した文書を十分に見つけられないケースもある。

TunedRAGでは、「候補抽出」「再評価」「順位付け」の三段階で検索結果を絞り込み、文書を意味の切れ目で分割することで検索精度の向上を図っている。

同社によると、日本語RAG向けデータセット「JQaRA」1668問を用いた評価では、検索精度(F1スコア)は0.591となり、既存のベクトル検索やキーワード検索の検索精度(0.332〜0.417)を上回ったという。なお、この数値は同社による測定結果であり、実際の性能は利用環境やデータセットによって異なる可能性がある。

日本語RAG向けデータセット「JQaRA」1668問を用いた検索精度(F1スコア)の評価

無料OSS版ではAGPLライセンスを採用

GMO AI RAGは今秋、無料のOSS版の公開を予定している。その際に採用するライセンスは「AGPL(Affero General Public License)」。AGPLは、「GPL(GNU General Public License、ソフトウェアを改変・配布する場合、ソースコードの公開を求めるOSSライセンス)」を拡張し、ネットワーク経由でサービスを提供する場合にも公開義務が生じる可能性があるOSSライセンスだ。

OSSライセンスには「MIT License」や「Apache License 2.0」のように、比較的制約の少ないものもある一方、AGPLはクラウドサービスとして外部提供するケースまで公開義務の対象となり得る点が特徴である。自社内のみでの利用を前提とする場合は影響が小さい一方、外部向けサービスへ組み込む場合にはライセンス条件を確認する必要がある。

GMOプライム・ストラテジー「GMO AI RAG」の主な料金プランと特徴

OSS公開後の開発動向が普及の鍵に

法人向けRAG市場では、検索精度だけでなく、AIエージェントとの接続性や運用形態の柔軟性が製品選定のポイントになりつつある。

GMO AI RAGは、MCPへの対応、オンプレミス環境での運用、ローカルLLMとの組み合わせ、そしてOSS公開という複数の要素を組み合わせることで、企業向けAI基盤としての展開を目指す。
同社がGMO AI RAGのEnterprise版とOSS版をどのように展開していくのか、また公開後にどのような開発者コミュニティが形成されるのかが、今後の展開を占うポイントとなりそうだ。

鷲木 造

ライター
テクノロジーがもたらす未来に興味あり。SF映画やゲームなどのカルチャーとガジェットが好き。黎明期マニア。わかりやすく、楽しく、そして有益な情報を発信する様に心がけ、業界の最新トレンドや新製品の情報をそれなりに早くお届けします。

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