スマホでも撮れる!北海道ならではのかわいい野生動物「エゾリス」と「ナキウサギ」に出合う方法

齋藤 千歳

Specialイベントカルチャー

氷河期から生き残る準絶滅危惧種「ナキウサギ」に合うなら東ヌプカウシヌプリ

東ヌプカウシヌプリならガレ場まで約1時間とかなりお手軽

生きる化石などとも呼ばれるナキウサギ。巣穴から顔を出したところを撮影しました。正面からみるとトトロっぽい印象を受けることもあります

皆さんは「ナキウサギ」をご存じでしょうか? 日本では北海道にしかおらず、「エゾナキウサギ」が正式名称だといいます。数万年前の氷河期にユーラシア大陸からマンモスなどと一緒にやってきたそうです。その後、氷河期が終わり、ユーラシア大陸と北海道をつなぐ道がなくなっても北海道の涼しい標高の高い場所に生息しています。

“生きる化石”などとも呼ばれるナキウサギですが、筆者はそのかわいさが最大の特徴だと思うのです。ぜひ1度見てみたいと思いつつ、相手は標高の高い涼しい場所にしか住まない準絶滅危惧種。そんなに簡単には出合えないと思っていました。ですが、北海道で山登りを趣味にしている友人に聞くと「大雪山系の山に登るとかなりの確率で見られるよ」とのこと。

普段はあまり山登りをしない筆者も、1時間程度も登れば、ナキウサギのいるガレ場(岩がゴロゴロと積み重なった場所)に着くと聞いて、いくつかの山や観察ポイントを巡ってみたのです。そして現在のところ、普段から山登りをしない普通の方でも十分に登れて、比較的登山道も険しくなく、よく整備されており、小1時間程度で山頂付近のガレ場に到着でき、ナキウサギとの遭遇率も高いという点からおすすめしたいのは「東ヌプカウシヌプリ」です。

東ヌプカウシヌプリの登山口は白樺峠にあり、バス停もある

拓殖バスの「白樺峠」バス停のすぐ脇が東ヌプカウシヌプリの登山口。バスは1日3〜4便なので注意してください

東ヌプカウシヌプリへのアクセスは帯広の北、鹿追町の白樺峠にある登山口からとなります。ちなみにヌプカウシヌプリとはアイヌ語で野原(原野)の上にいらっしゃる山という意味だそうです。とかち帯広空港からはレンタカーなどのクルマで約1時間15分。タクシーでも同様の時間で到着しますが、料金は1万5000円を超えるようです。

ちなみにGoogleマップなどで検索する場合は「白樺峠バス停」とすると検索しやすくなっています。白樺峠バス停で検索するとヒットするとおり、拓殖バスのバスが走っており、帯広駅バスターミナルから51系統で然別湖畔温泉行きが出ています。

ただし、平日で1日4便、土日祝日などは1日3便程度しか走っていませんので、しっかりと下調べをしたうえで利用しないと、下山してきたものの帰りの足がないといった事態が発生しかねないので注意していください。

マイカーの場合は、白樺峠の道路部分に駐車スペースが用意されているので、みなさんこちらを利用しているようです。登山道の入り口には入林届が用意されていますので、しっかりと記載してから入林(入山)してください。

普段はかなり素早く動くナキウサギですが、時折ゆっくり止まってくれることがあります。そんなタイミングがシャッターチャンスです

気持ちよく1時間ちょっと歩くとナキウサギを高確率で観察できるガレ場

ナキウサギはその名のとおり頻繁に鳴きます。この小鳥のような甲高い「ピッピィ」や「ピッチューイ」といった鳴き声を頼りに探すことも可能です

東ヌプカウシヌプリは標高1252mですが、登山口がすでに標高約900mあるので標準的なペースで登っても頂上までは1時間程度です。実際に運動不足の筆者が、カメラ機材一式と雨具や防寒具、行動食、飲料水などを背負って写真を撮影しながら登りましたが、頂上どころかその奥のガレ場まで1時間程度で到着しましたので、さほど厳しいコースではありません。

実際に筆者は朝イチで登って、夕方くらいまでの7時間ほどガレ場でナキウサギを撮影していたのですが、高齢の女性のグループや、小学校低学年ぐらいのお子さんを連れた親子連れなども多く、ガレ場でのナキウサギとの出合いを楽しんでいました。ほとんどの方が10〜20分、運の良い方はほとんど待つことなくナキウサギを観察していました。

このようにかなり気軽に楽しむこともできる東ヌプカウシヌプリ。雪の降る頃までは楽しめるそうです。しかしながら、軽登山とはいえ登山は登山、防寒具や雨具、フットウェア、行動食、水などはしっかりと用意していきましょう。登山口(入林口)で入林届をしっかりと記載するのはもちろんのこと、家族などにいつどこの山に登り、いつ下山する予定なのかなどをきっちりと連絡しておくことをおすすめします。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」(写真上)と「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」(写真下)、さらにテレコンバーター「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」。どれもコンパクトかつ軽いので登山には本当に便利です

ガレ場に着いたら、まず耳を澄ませてゆっくりと待ってみる

おそらく今年生まれたばかりの若い個体。成体よりもひとまわり以上小さく、幼さを残した外見はさらにかわいく見えます

東ヌプカウシヌプリの頂上からさらに進んで、多くの方が撮影などをしているガレ場に着くと、すぐに「ナキウサギはどこだ!」と気持ちが焦るのはわかりますが、まずはひと呼吸。ちょっと落ち着いてガレ場全体を見渡し、ガレ場の注意書きなどに目を通してから、ゆっくりと耳を澄ませてみましょう。ナキウサギはその名のとおり、よくなくウサギです。「ピッピィ」や「ピッチューイ」などといった甲高く小鳥の鳴き声にも似た声を頻繁に発します。

この声の方向を観察すると、ガレ場の岩の隙間から、そのかわいらしい姿を見せていることがあります。とはいえ、岩場で死角の多い条件なので体長が15cmほどしかないナキウサギはなかなか見つからないこともあります。しかし、ガレ場全体を眺めるように見ていると、動きのない岩のなかで動いているナキウサギを見つけるのに徐々に慣れてくるでしょう。

筆者は東ヌプカウシヌプリのガレ場に約7時間もいたので何十回もナキウサギを目撃しましたが、実はガレ場の下には私たちが思っていている以上に広い空間があるようで、遠く離れた場所だけではなく、私たちがナキウサギが出てくるのを待っている足の下からもナキウサギが出てくることも珍しくありません。

たまたま筆者がナキウサギを待ちながら座っていた隣に偶然やってきた女性は座ってナキウサギを待ち始めると同時にもう手の届く位置の洞穴からナキウサギが出てきて、驚きながらスマートフォンで撮影していました。筆者はちょうど隣にいたのですが、カメラの望遠レンズを着けていたため、なんと近すぎて撮影できないという状態でした。

東ヌプカウシヌプリのガレ場の場合、天候や季節といった要因はあるのでしょうが、筆者が見ている限り、短い方なら10分以内、かなり運が悪くても30分以内、よほどのことがない限り1時間以内にはナキウサギと出合えます。また、ナキウサギが姿を現すと撮影しているカメラマンなどがゆっくりと移動を始めるので、それを追いかけるように静かに移動していくとナキウサギを一緒に見られることも多いようです。

慣れたカメラマンさんたちだと、自分たちが素早く撮影したあと、ほかの人たちに観察ポジションを譲っているシーンも見られ、比較的和気あいあいとナキウサギの観察を楽しんでいるのが印象的でした。

レンズやカメラはエゾリスの撮影の際に説明したポイントと同じですが、林の中にいるエゾリスに対して、ガレ場は天気が良ければ太陽の光がたっぷりと当たるため、ぶれないようにシャッター速度を稼ぐために明るいレンズというよりは、より遠くを大きく撮影できる、焦点距離の長い望遠レンズがおすすめです。

また、筆者が登山などアウトドアシーンで愛用しているOM SYSTEMでは「AI被写体認識AF」と呼ばれていますが、「顔認識」や「被写体認識」と呼ばれるミラーレスカメラによるオートフォーカスの自動追尾機能は小動物などの撮影にはいまや必須といえるので、ぜひ活用してみてください。

ガレ場の入り口付近にはガレ場利用の際の注意点などが用意されています。利用の前に一読してマナーを守って楽しくナキウサギを観察したいものです

東ヌプカウシヌプリでナキウサギに出合うために必要な装備

非常時に備えてキャンピングカーの中にキャプテンスタッグの「UW-5001 非常トイレ用 凝固・脱臭剤 かたまるさん」と「UW-5002 非常用 簡易トイレ」を用意しています

東ヌプカウシヌプリのガレ場まで向かう登山で筆者が必要とおすすめしたいアイテムは「携帯トイレ」です。日本のアウトドアシーンやクルマ旅などではトイレ施設が充実しているので、つい見落としがちですが東ヌプカウシヌプリは登山口はもちろん、頂上、ガレ場、登山道のすべてにトイレはありません。そのため、携帯用トイレはある意味必須の装備といえます。困ったら、その辺で済ませればという人が多くなるほど、ナキウサギたちの住む環境に多くの影響を与えるので、携帯トイレを持って登り、使った場合はすべてを持って帰ってきてください。

筆者の場合は、登山用というよりも非常用備蓄としてキャプテンスタッグの「UW-5001 非常トイレ用 凝固・脱臭剤 かたまるさん」(実勢価格2400円前後)と「UW-5002 非常用 簡易トイレ」(実勢価格4000円前後)をキャンピングカーの中に用意しています。

これも見落としがちなのですが、災害時などに水洗トイレが使えないという事態はかなり厄介な問題です。筆者は家族で実際にテストを行って非常用トイレだけで過ごしたことがあるのですが、数十個の備蓄がわずか数日でなくなります。いざとなれば庭で排せつをしても問題なしという環境でもない限り、非常用トイレは水や食料と同じレベルで必須の備蓄物になるので、ぜひ用意しておくことをおすすめします。

筆者はこの非常用備蓄のテストなども兼ねて、登山の際には「UW-5001 非常トイレ用 凝固・脱臭剤 かたまるさん」をザックに入れて登っています。また、登山口にトイレがない場合はキャンピングカーの中で用を済ませてから登山を開始することもありますし、子どものトイレがどうしても我慢できないシーンなどでも活躍してくれるのです。用意があるだけで、圧倒的に助かるのでぜひ用意しておくことをおすすめします。

筆者はおなかが弱いので大きなほうにも対応できるものが安心ですが、小さな方だけで問題ないなら「携帯トイレスッキリさん」(実勢価格300円前後)も便利です

山には登れないがナキウサギに出合いたい場合は?

白樺峠から北上していくと然別橋の手前と奥に右手に入ることのできる小道があります。この小道に面したエリアのナキウサギが姿を現すそうです

東ヌプカウシヌプリのガレ場までは1時間ちょっととはいえ、さまざまな理由により、さすがに山登りは無理という方もいるでしょう。実は山に登れなくてもナキウサギと出合える可能性のある場所はいくつかあるそうです。そのなかでも筆者が知っている場所で東ヌプカウシヌプリの登山口である白樺峠から、さらに3〜4分程度クルマで北上すれば、山に登らなくてもナキウサギが観察できるポイントがあります。

白雲山の登山口の南側にある側道を入った場所で、筆者は白雲山にナキウサギを撮影に行った際や今回の東ヌプカウシヌプリへの登山の際などに何度か寄ってみたのですが、残念ながら筆者が15〜20分程度待ってみた程度では、ナキウサギの姿を見ることはできませんでした。しかし、このポイントを訪ねる度にほかにも数組ナキウサギが姿を現すのを待っており、出合える可能性はさほど高くないものの1日といったレベルでゆっくりと待っているとナキウサギに出合うことができるようです。

クルマでそのままナキウサギと出合えるポイントに行けるのは大きなメリットといえるでしょう。幼い子どもなどと一緒にナキウサギを待ってみるのも良いかもしれません。筆者は間もなく3歳になる息子と一緒に時間に余裕をもって訪れるのも良いかと思っています。 

筆者はこのポイントでナキウサギの姿を目撃したことはありませんが、観察の注意書きなどがされているところをみると、それなりの頻度で姿を現すのでしょう

■東ヌプカウシヌプリへのアクセス

飛行機を利用するのであれば、とかち帯広空港からレンタカーなどで白樺峠にある東ヌプカウシヌプリの登山口まで約1時間15分です。

Googleマップで検索するなら「白樺峠バス停」が分かりやすくなっています。登山口を検索するのに「白樺峠バス停」をおすすめするくらいですので、帯広駅などからバスでのアクセスも可能ですが1日3、4便しかありませんので、かなり緻密なスケージュール調整が必要になるためおすすめはできません。

冬眠しないエゾリスとナキウサギは、夏休み以外も出合える

ナキウサギは食料を備蓄する秋、エゾリスは冬毛のシーズンも魅力的

雪景色の中、冬毛のエゾリスもかなりかわいいのですが、当たり前ですが北海道の冬なので非常に寒いのです。しっかりとした装備で挑戦してください

意外に思う方も多いと思いますが、実はエゾリスもナキウサギも冬眠しないので、夏や秋と同じ場所に行けば、冬でも出合うことができます。とはいえ、筆者は北海道観光のついでにエゾリスやナキウサギに出合うのであれば、晩春から初秋までをおすすめします。理由は非常にシンプルで、北海道は寒いから。特に早朝や夜などは真夏であってもかなり冷えます。

1000m越えの山の上にいるナキウサギに至っては、山好きの知人などは「雪が少なければ冬でも観察できるよ」などと言いますが、雪の残る初春や雪が降りかねない晩秋の北海道の山を登ろうと思えば、ちょっとしたハイキングレベルの装備では話になりません。そのため、安全性を考えるとナキウサギは初夏から初秋あたりまで。秋が近づくと冬の食糧を巣穴に備蓄するため、木の葉などをくわえて走るナキウサギの姿が観察されるので、こちらもかわいらしくておすすめです。

また、市街地である千歳市青葉公園のエゾリスは冬でもいいのでは? という意見もあるでしょう。事実、筆者は真冬のシーズンも冬毛になったエゾリスを撮影するために青葉公園のジョギング・ウオーキングコースを度々訪れています。大きな問題はないといえるでしょう。しかし、千歳市は思う以上に冬が寒く、最低気温がマイナス20度を下回る日も珍しくありません。青葉公園のジョギング・ウオーキングコースは冬の間はノルディックスキーのコースになっており、マイナス2桁級の寒さのなか1時間程度歩き回れる装備が必要になるのです。

晩春から秋までに北海道旅行に訪れるなら、北海道ならではのかわいい動物であるエゾリスやナキウサギに出合ってみてはどうでしょうか。とても感動しますよ。
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齋藤 千歳

フォトグラファー・ライター
北海道千歳市在住・千歳市生まれのフォトグラファー/ライター。キャンピングカーの「方丈号」から各種アウトドア、カメラ、レンズ、ガジェットに関する情報を発信したり、家族3人で北海道一周などしたりを楽しんでいる。

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