あくびはなぜうつる?
誰かが大きなあくびをすると、周りにいる人もつられてあくびをしてしまうことがあります。これも、身近で不思議な現象のひとつです。
もともと、あくびは脳に酸素を行き渡らせるためではないかと考えられていました。ですが体内に取り入れられる酸素量を測定しつつ行われた実験では、あくびと酸素の量には関係がないことがわかっています。
現在では「体温より温度が低い空気を大量に取り込んで脳を冷やし、覚醒させている」という説が有力です。そういえば、しばらく何かに集中していてふと気が抜けたときや、眠りから目覚めた直後にあくびをすると、頭が冷えてスッキリするような気もします。
一方、誰かのあくびにつられて周囲の人もあくびをしてしまう現象については、これまでいくつか研究はされているものの、科学的に解明されたとはいえないのが実情です。とはいえ、あくびがうつる現象は人間だけでなく、サルやイヌ、ブタなどの哺乳類、さらに鳥類でも確認されています。
では、どうしてこんな現象が起こるのでしょうか。過去の研究によれば、他人のあくびを見た人の約30~60%が、実際につられてあくびをすることがわかっています。これには、ある程度の社会性を持つ動物に共通する本能的な反応が関わっているのではないかという説が有力です。
先ほど紹介した「あくびがうつる動物たち」は、いずれも群れで行動する習性を持っています。群れで動くのは、エサを見つけたり、繁殖したり、外敵から身を守ったりと、生存するために効率がいいから、つまり、種の生存確率を高めるためです。
単独で行動するよりも、群れで行動する方が、多くの目で周囲を警戒できます。もし、群れの誰かが危険を察知すれば、その個体は身構えたり、相手を威嚇しつつ周囲に危険を知らせるために声を出したりするでしょう。周囲の仲間もそれに気付けば、やはりすぐに身構えて周囲を警戒するはずです。このような行動は、群れを形成するような社会性のある動物に共通しています。
群れを成す動物たちにとって、油断は最も危険な状態です。そのため、緊張感や警戒心が緩んでいるときは、群れの誰かのあくびをきっかけに、それを見た他の個体にもあくびが本能的に伝わり、結果として群れ全体の脳の覚醒度が高く保たれているのではないかと考えられています。
この現象は「共感性」という言葉で説明されることがあります。ここでいう共感とは、同情のような「情動的共感」ではなく、目の前の相手の状況や行動を自分に反映し、自分も同じように行動する「認知的共感」を指します。認知的共感とは、周囲の誰かが突然警戒し始めると、原因を考えるより先に自分も周囲を警戒・確認するといった、本能的な行動です。
あくびがうつる理由については、「目の前の誰かの行動を理解し、同じ動きを再現する働きがある『ミラーニューロン』が関係している」という仮説がありました。ですが近年のMRIを用いた研究などにより、その関連性は低いと考えられています。
つまり、あくびがうつるメカニズムは未解明な点も多いものの、人間をはじめとする社会性のある動物に広く見られる現象であり、進化生物学や神経科学の分野で、現在も研究が続けられているテーマなのです。
もともと、あくびは脳に酸素を行き渡らせるためではないかと考えられていました。ですが体内に取り入れられる酸素量を測定しつつ行われた実験では、あくびと酸素の量には関係がないことがわかっています。
現在では「体温より温度が低い空気を大量に取り込んで脳を冷やし、覚醒させている」という説が有力です。そういえば、しばらく何かに集中していてふと気が抜けたときや、眠りから目覚めた直後にあくびをすると、頭が冷えてスッキリするような気もします。
一方、誰かのあくびにつられて周囲の人もあくびをしてしまう現象については、これまでいくつか研究はされているものの、科学的に解明されたとはいえないのが実情です。とはいえ、あくびがうつる現象は人間だけでなく、サルやイヌ、ブタなどの哺乳類、さらに鳥類でも確認されています。
では、どうしてこんな現象が起こるのでしょうか。過去の研究によれば、他人のあくびを見た人の約30~60%が、実際につられてあくびをすることがわかっています。これには、ある程度の社会性を持つ動物に共通する本能的な反応が関わっているのではないかという説が有力です。
先ほど紹介した「あくびがうつる動物たち」は、いずれも群れで行動する習性を持っています。群れで動くのは、エサを見つけたり、繁殖したり、外敵から身を守ったりと、生存するために効率がいいから、つまり、種の生存確率を高めるためです。
単独で行動するよりも、群れで行動する方が、多くの目で周囲を警戒できます。もし、群れの誰かが危険を察知すれば、その個体は身構えたり、相手を威嚇しつつ周囲に危険を知らせるために声を出したりするでしょう。周囲の仲間もそれに気付けば、やはりすぐに身構えて周囲を警戒するはずです。このような行動は、群れを形成するような社会性のある動物に共通しています。
群れを成す動物たちにとって、油断は最も危険な状態です。そのため、緊張感や警戒心が緩んでいるときは、群れの誰かのあくびをきっかけに、それを見た他の個体にもあくびが本能的に伝わり、結果として群れ全体の脳の覚醒度が高く保たれているのではないかと考えられています。
この現象は「共感性」という言葉で説明されることがあります。ここでいう共感とは、同情のような「情動的共感」ではなく、目の前の相手の状況や行動を自分に反映し、自分も同じように行動する「認知的共感」を指します。認知的共感とは、周囲の誰かが突然警戒し始めると、原因を考えるより先に自分も周囲を警戒・確認するといった、本能的な行動です。
あくびがうつる理由については、「目の前の誰かの行動を理解し、同じ動きを再現する働きがある『ミラーニューロン』が関係している」という仮説がありました。ですが近年のMRIを用いた研究などにより、その関連性は低いと考えられています。
つまり、あくびがうつるメカニズムは未解明な点も多いものの、人間をはじめとする社会性のある動物に広く見られる現象であり、進化生物学や神経科学の分野で、現在も研究が続けられているテーマなのです。
しゃっくりを止める方法は科学的に正しい?
いったん始まってしまうと、止めようとしてもなかなか止まらないのがしゃっくりです。しゃっくりは、胸とお腹を仕切っている横隔膜が、何かの弾みにけいれんして起こります。
横隔膜がけいれんすると、声門が収縮・閉鎖して「ヒック」といった音が口から出る不随意な現象といわれています。無意識に起こる現象であるため、その原因もはっきりしていません。
科学的には、しゃっくりは「横隔膜が強く収縮し、声帯が同時に閉じることで発生する吸気系反射運動」とされています。その原因は不明ながら、長く続いたり頻繁に起こったりする場合は、何らかの原因があると考えられます。
しゃっくりを止める民間療法は、さまざまな方法が知られています。例えば、急に驚かせる、ご飯を丸飲みにする、難しいクイズを出して意識をそらす、逆にしゃっくりに意識を集中しながら息を止める、うつむいて冷たい水を飲む……調べてみると、他にもたくさんの方法が見つかります。
しゃっくりは、鼻腔の奥から喉にかけての「舌咽神経咽頭枝(ぜついんしんけいいんとうし)」と呼ばれる部分が刺激を受けることで始まると考えられています。
この刺激が延髄にあるしゃっくりに関係する中枢神経を経由して横隔系神経と迷走神経に伝わり、横隔膜のけいれんと声門の閉鎖を引き起こします。そして口の中の粘膜には迷走神経が分布しているため、冷水でこの部分を冷やして麻痺させれば、しゃっくりが止まりやすくなることもあるようです。
先ほど紹介した民間療法の「うつむいて冷たい水を飲む」という方法は、科学的にも理にかなっている部分があるといえるでしょう。ただ48時間以上も続くようなしゃっくりの場合は、医師に相談することをおすすめします。
しゃっくりのきっかけになる刺激には、炭酸飲料を飲んだときや、非常に冷たい空気を吸い込んだとき、胃酸による炎症などが考えられます。ただしこれらが必ずしゃっくりを引き起こすわけではありません。また、多くの人は幼少期にしゃっくりを多く経験し、大人になるにつれ、その頻度は下がります。これは、しゃっくりの反射運動を抑える働きがある「ガンマアミノ酪酸(以下、GABA)」によるものと考えられています。
日常生活では、鼻や喉が刺激されることは普段からたくさんありますが、大人になるとGABAによる抑制の仕組みが発達しているため、しゃっくりが起こりにくいというわけです。
ただし、飲酒によって血中のアルコール濃度が上がると、神経系全般の働きが鈍り、しゃっくりが出やすくなります。酔っぱらった人がよくしゃっくりをしているイメージも、こうした根拠を踏まえて考えると興味深いものです。
横隔膜がけいれんすると、声門が収縮・閉鎖して「ヒック」といった音が口から出る不随意な現象といわれています。無意識に起こる現象であるため、その原因もはっきりしていません。
科学的には、しゃっくりは「横隔膜が強く収縮し、声帯が同時に閉じることで発生する吸気系反射運動」とされています。その原因は不明ながら、長く続いたり頻繁に起こったりする場合は、何らかの原因があると考えられます。
しゃっくりを止める民間療法は、さまざまな方法が知られています。例えば、急に驚かせる、ご飯を丸飲みにする、難しいクイズを出して意識をそらす、逆にしゃっくりに意識を集中しながら息を止める、うつむいて冷たい水を飲む……調べてみると、他にもたくさんの方法が見つかります。
しゃっくりは、鼻腔の奥から喉にかけての「舌咽神経咽頭枝(ぜついんしんけいいんとうし)」と呼ばれる部分が刺激を受けることで始まると考えられています。
この刺激が延髄にあるしゃっくりに関係する中枢神経を経由して横隔系神経と迷走神経に伝わり、横隔膜のけいれんと声門の閉鎖を引き起こします。そして口の中の粘膜には迷走神経が分布しているため、冷水でこの部分を冷やして麻痺させれば、しゃっくりが止まりやすくなることもあるようです。
先ほど紹介した民間療法の「うつむいて冷たい水を飲む」という方法は、科学的にも理にかなっている部分があるといえるでしょう。ただ48時間以上も続くようなしゃっくりの場合は、医師に相談することをおすすめします。
しゃっくりのきっかけになる刺激には、炭酸飲料を飲んだときや、非常に冷たい空気を吸い込んだとき、胃酸による炎症などが考えられます。ただしこれらが必ずしゃっくりを引き起こすわけではありません。また、多くの人は幼少期にしゃっくりを多く経験し、大人になるにつれ、その頻度は下がります。これは、しゃっくりの反射運動を抑える働きがある「ガンマアミノ酪酸(以下、GABA)」によるものと考えられています。
日常生活では、鼻や喉が刺激されることは普段からたくさんありますが、大人になるとGABAによる抑制の仕組みが発達しているため、しゃっくりが起こりにくいというわけです。
ただし、飲酒によって血中のアルコール濃度が上がると、神経系全般の働きが鈍り、しゃっくりが出やすくなります。酔っぱらった人がよくしゃっくりをしているイメージも、こうした根拠を踏まえて考えると興味深いものです。

Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi