2025年4月、東京ディズニーランドのトゥモローランドに、“はるか彼方の銀河系”から小さなお友達がやって来ました。その名は「BDXドロイド」。同エリアのアトラクション「スター・ツアーズ:ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー」のスペシャルバージョン公開に合わせて、2025年6月30日までの期間限定で登場します。設定では、“スター・ツアーズ社が所有するドロイド”として、トゥモローランド内に現れます。
BDXドロイドは動きも大変ユーモラス
期間中は、ディズニープラスで配信中のスター・ウォーズシリーズ作品『アソーカ』や『マンダロリアン』などでおなじみのキャラクターも登場します。
このBDXドロイドが、ディズニーのキャラクターとしてパークに登場するのは今回が世界初。3体のドロイドたちは、2026年公開予定の映画『マンダロリアン&グローグー(原題)』にも登場することが発表されており、未来に向かって羽ばたく存在です。
ただし彼らの初出は2023年。当時、スター・ウォーズファンの間で話題になったのはもちろん、技術的にも、AIの文脈からも大きな注目を集めたのでした。
ここからは、BDXドロイド誕生の背景を少しだけひも解いていきましょう。
このBDXドロイドが、ディズニーのキャラクターとしてパークに登場するのは今回が世界初。3体のドロイドたちは、2026年公開予定の映画『マンダロリアン&グローグー(原題)』にも登場することが発表されており、未来に向かって羽ばたく存在です。
ただし彼らの初出は2023年。当時、スター・ウォーズファンの間で話題になったのはもちろん、技術的にも、AIの文脈からも大きな注目を集めたのでした。
ここからは、BDXドロイド誕生の背景を少しだけひも解いていきましょう。
『マンダロリアン&グローグー(原題)』の監督、ジョン・ファブローとBDXドロイド。 頭の上にはドロイド修理屋のOttoがいます
BDXドロイドのご先祖はゲーム出身?
公式には明言されていませんが、スター・ウォーズの世界には小さな2足歩行ドロイドがすでに存在していました。その名も「BDエクスプローラー・ドロイド(通称「BD-1」)」です。
BD-1はジェダイに仕え、「オーダー66」と呼ばれるジェダイの大粛清を生き延びたジェダイ、カル・ケスティスとともに冒険を繰り広げました。ただし、これは映画ではなくゲーム『スター・ウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』内で語られたもの。BD-1は、主人公をサポートする小さな相棒として登場しました。
BD-1はジェダイに仕え、「オーダー66」と呼ばれるジェダイの大粛清を生き延びたジェダイ、カル・ケスティスとともに冒険を繰り広げました。ただし、これは映画ではなくゲーム『スター・ウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』内で語られたもの。BD-1は、主人公をサポートする小さな相棒として登場しました。
『スター・ウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』を開発したEAによる「BD-1」紹介動画
via www.youtube.com
BD-1は多くのファンを魅了し、ついには2022年に配信されたドラマ『ボバ・フェット』シリーズで映像作品にも出演を果たしました。
ゲームの世界から飛び出し、スター・ウォーズの“正史(カノン)”に組み込まれた、きわめて珍しいドロイドです。
ゲームの世界から飛び出し、スター・ウォーズの“正史(カノン)”に組み込まれた、きわめて珍しいドロイドです。
Have you watched Chapter Five of #TheBookOfBobaFett? pic.twitter.com/pIvoweRmMz
— The Book of Boba Fett (@bobafett) January 28, 2022
ゲームの世界から飛び出し、とうとう映像化されたBD-1
そして、ついに技術がその存在に追いつきます。ウォルト・ディズニーの関連会社であるウォルト・ディズニー・イマジニアリングで次世代技術を研究するディズニー・リサーチが、2023年10月に開催されたロボット工学の国際会議「2023 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems(通称、IROS)」で、新たな「オーディオアニマトロニクス(ディズニーのテーマパークやアトラクションで使用されるロボット)」を発表したのです。
それこそが、後に「BDXドロイド」と名付けられるロボットでした。
それこそが、後に「BDXドロイド」と名付けられるロボットでした。
「ディズニーのロボットキャラクターパイプラインへの新しいアプローチ」と題されるオーディオアニマトロニクスの紹介動画
via www.youtube.com
BDXドロイドの本当のすごさはAIにあり?
ディズニー・リサーチが発表した映像の題名は「ディズニーのロボットキャラクターパイプラインへの新しいアプローチ」です。決して「かわいいドロイドを作ったよ!」という内容ではありません。それはなぜでしょうか。
この映像のポイントは、ロボットが「どうやって歩くようになったのか」、そして「押されても蹴られても転ばない」仕組みをどう実現したかという技術的な点にあります。研究室の平らな床だけでなく、草木が生い茂る不安定な場所でも安定して歩けるその能力を知るには、むしろ「AI」の文脈が必要になってきます。
ここでいう「AI」を簡単に一言で説明するならば、人間の推論や認識の方法をコンピューターに学ばせ、似たような判断や行動をさせる技術のこと。今回は「歩行」という行動をAIに学ばせる「強化学習」を行い、歩行能力を身につけさせる試みが行われました。
ディズニー・リサーチは、後にBDXドロイドと名付けられるロボットを、まずは仮想空間でモデル化し、そのモデルのコピーを仮想空間上に大量に配置しました。
そしてそれぞれのドロイドにランダムな動作指示を与え、凸凹や山、砂地などさまざまな地形の仮想空間を歩かせます。仮想モデルの構造も少しずつ変えながら、いわば“いっせーの!”でロボットを歩かせ、その結果をAIが学習。
仮想空間内でこのプロセスを数えきれないほど繰り返すことで、ロボットはわずか数カ月で歩行能力を身につけました。
これまで2足歩行ロボットの開発には、実機での試行錯誤が必要で、その研究期間は非常に長いものでした。しかし仮想空間とAI、そしてそのAIを搭載できるリアルなロボットという実体の融合が、大きな技術的ブレイクスルーをもたらしたのです。
この映像のポイントは、ロボットが「どうやって歩くようになったのか」、そして「押されても蹴られても転ばない」仕組みをどう実現したかという技術的な点にあります。研究室の平らな床だけでなく、草木が生い茂る不安定な場所でも安定して歩けるその能力を知るには、むしろ「AI」の文脈が必要になってきます。
ここでいう「AI」を簡単に一言で説明するならば、人間の推論や認識の方法をコンピューターに学ばせ、似たような判断や行動をさせる技術のこと。今回は「歩行」という行動をAIに学ばせる「強化学習」を行い、歩行能力を身につけさせる試みが行われました。
ディズニー・リサーチは、後にBDXドロイドと名付けられるロボットを、まずは仮想空間でモデル化し、そのモデルのコピーを仮想空間上に大量に配置しました。
そしてそれぞれのドロイドにランダムな動作指示を与え、凸凹や山、砂地などさまざまな地形の仮想空間を歩かせます。仮想モデルの構造も少しずつ変えながら、いわば“いっせーの!”でロボットを歩かせ、その結果をAIが学習。
仮想空間内でこのプロセスを数えきれないほど繰り返すことで、ロボットはわずか数カ月で歩行能力を身につけました。
これまで2足歩行ロボットの開発には、実機での試行錯誤が必要で、その研究期間は非常に長いものでした。しかし仮想空間とAI、そしてそのAIを搭載できるリアルなロボットという実体の融合が、大きな技術的ブレイクスルーをもたらしたのです。
ディズニー・リサーチが公開しているAIに2足歩行を身につけさせる研究の概要
via www.youtube.com

BDXドロイドは2025年3月、AI技術を支える世界的な半導体メーカー・NVIDIAが開催した「GTC AI カンファレンス」の基調講演にサプライズ出演し、大きな話題となりました。
最先端のAI技術が集結するこのイベントでの登場は、BDXドロイドがまさにAI」の文脈で理解すべき存在であることを象徴しています。講演では、NVIDIAのCEO ジェンスン・フアン氏がBDXドロイドをステージに呼び寄せ、「このドロイドにはNVIDIAのAIエンジンが2基、搭載されています」と誇らしげに紹介しました。
最先端のAI技術が集結するこのイベントでの登場は、BDXドロイドがまさにAI」の文脈で理解すべき存在であることを象徴しています。講演では、NVIDIAのCEO ジェンスン・フアン氏がBDXドロイドをステージに呼び寄せ、「このドロイドにはNVIDIAのAIエンジンが2基、搭載されています」と誇らしげに紹介しました。
ジェンスン・フアン氏による基調講演のクライマックスにBDXが登場(2時間4分くらいから)
via www.youtube.com

NVIDIAのCEO ジェンスン・フアンがBDXドロイドを紹介

宮田 健
ライター
2012年よりITセキュリティのフリーライターとして活動するかたわら、個人活動として“広義のディズニー”を取り上げるWebサイト「dpost.jp」を1996年ごろから運営中。テーマパークやキャラクターだけではない、オールディズニーが大好物。2020年、2022年には講談社「ディズニーファン」に短期連載も。
Webサイト:https://dpost.jp/
X:@dpostjp