話題の建築ツーリズムを表参道で体験、ハイアット財団が認めた日本の至宝5選：あなたの知らないツーリズム

2024.6.19

建物の奥にある自然光に照らされた贅沢な空間：槇文彦「スパイラル」

スパイラル（東京都港区南青山5-6-23）は1985年竣工の青山複合文化施設。正方形、円、正三角形、円錐など「純粋幾何学体」を基本要素にアルミパネルやガラス、金属的なタイルを多用。エントランスホールから2階へと続く螺旋状のスロープが設置されたアトリウムが空間を構成する。1987年、アメリカ建築家協会の選定するアルミニウムを使った建築に与えられる「R.S.レイノルズ賞」を受賞。

槇文彦（まき・ふみひこ）：1993年プリツカー賞受賞。米国での活動の後、1965年に帰国して槇総合計画事務所を設立。代表作にヒルサイドテラスや京都国立近代美術館など。

スパイラル外観
https://maps.app.goo.gl/zRDf1TNcngUvvXEh9

スパイラル内観
https://maps.app.goo.gl/8gneVW4nYGDBK19T9

ブランドを体現、エレガントで透明感ある外観：SANAA（妹島和世＋西沢立衛）「ディオール表参道」

ディオール表参道（東京都渋谷区神宮前5-9-11）は2003年竣工のクリスチャン・ディオールの日本旗艦店。透明感ある外装はガラスとアクリルによる二重構造。ディオールのブランドイメージである「クラシカルでありながらも現代的であり、エレガントでフェミニンな感じ」を実現するため、ドレープ状のアクリルを採用。「高さ30mの4階建て」の条件を満たすため、売り場と階高の高い設備スペースを天井裏に設けて8層で構成される。

SANAA（サナア、Sejima And Nishizawa And Associates）：妹島和世（せじま・かずよ）と西沢立衛（にしざわ・りゅうえ）による建築家ユニット。2010年プリツカー賞受賞。代表作に金沢21世紀美術館やルーヴルランスなど。2004年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞受賞。

ディオール表参道外観
https://maps.app.goo.gl/B6eyNcv4yVZR6RuN8

「ケヤキ」が生み出すデザインと構造：伊東豊雄「旧TOD’S 表参道ビル」

最後に紹介するのは旧TOD’S 表参道ビル（東京都渋谷区神宮前5-1-5）。旧と付くのは「TOD'S」が2019年に閉店したため。現在は「ボッテガ・ヴェネタ表参道フラッグシップ」と「ケリング」の本社ビルとなっている。地上7階・地下1階建て。表参道の並木であるケヤキのシルエットをモチーフにしたファサードを展開。9本の樹木のパターンで6面を構成し、樹形が上に伸びていくようなデザインのコンクリート外壁と窓とを一体に構成。打ち放しコンクリートの枝振りが、実際に建物を支えている。

伊東豊雄（いとう・とよお）：2013年プリツカー賞受賞。2002年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞受賞。代表作にせんだいメディアテーク、台中国家歌劇院など。

旧TOD’S 表参道ビル外観
https://maps.app.goo.gl/MC8Qa1uzqBjrS3vp6

表参道には新しい建築を積極的に採用する企業や海外のラグジュアリーブランドが多い。今回紹介したプリツカー受賞者では、2001年に受賞したスイスの建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンによる「プラダ青山店」（2003年建築）、「ミュウミュウ青山店」（2015年建築）も見ることができる。世界的な建築家による建築が徒歩で回れる範囲に集中するエリアなので、表参道を建築の視点からも見てもらいたい。そして現代建築を旅の楽しみにするきっかけにして欲しい。

25 件

牧野友衛

一般社団法人メタ観光推進機構　代表理事
新しい観光の概念「メタ観光」を提唱し、2020年より現職。GoogleやYouTube、Twitterの事業開発の責任者を務め、トリップアドバイザー、Activision Blizzard Japanの代表を歴任。20年以上の外資系企業での経験を生かし、事業戦略やイノベーションの観点から様々な公的機関の委員を務める。現在は日本政府観光局(JNTO)デジタル戦略アドバイザー、東京都「東京の観光振興を考える有識者会議」委員、群馬県世界遺産専門委員会委員等。