強力なリミックス機能とトラック延長機能
その他に「Remix(リミックス)」と「Extend(トラック延長)」という機能も用意されている。リミックス機能は、プロンプトで曲の雰囲気やジャンルなど、具体的なリミックス要素を入力するだけでなく、その変更度合いを「Variance(リミックス効果の強度)」スライダーを使って調整できる。

リミックス機能ではVarianceスライダーを操作してリミックス効果の強度を設定できる
この機能を使って、元々ジャジーヒップホップ風だった曲をラップメタル風にリミックスしてみた。
リミックス前
リミックス前
リミックス後
この曲では、「Variance」を最高値に設定し、プロンプトボックスに"Rap Metal"と入力したところ、完全にラップメタルとは言わないまでも、ジャジーな雰囲気から歪んだギターが印象的なロック調にリミックスされた。リミックスの結果としてはまずまずといったところだろう。
トラック延長機能では、元々の曲のクリップに32秒の延長クリップを追加できる。延長クリップ作成時は、「イントロ」「元々の曲のクリップの前」「元々の曲のクリップの後」「アウトロ」の4つから任意のパートを選択でき、最大10個まで追加できる。また、リミックス機能同様、曲の雰囲気や楽器などをプロンプトで追加できるほか、ボーカルの有無の指定や歌詞の追加も可能だ。

トラック延長機能では、元々の曲のクリップにイントロなど4つの追加セクションから選択したものを追加できる
以下の曲はこの機能を使って、元々の曲のクリップにイントロ、追加セクション、アウトロを加えて3分超に延ばしたものだ。
この曲のイントロではバスドラムを抜いたほか、あとの延長パートでは、元々の女性ボーカルに加え、男性ラップやサックスを追加。さらにアウトロでは、ピアノやサックスを抜き、ボーカルとドラムだけの状態になるように、それぞれの追加パートのプロンプトを調整した。
AI作曲サービスは大抵、曲の一部分のみを生成するため、必ずしもイントロから始まるとは限らない。しかし、Udioでは、このように展開を自分で作り、ちゃんとしたひとつの曲として成立させることが可能だ。この点は、しっかりと展開がある音楽を作りたい人にとって、Udioを使うメリットのひとつになるだろう。
Udioは複雑な展開の曲を作成できるのか?
また、筆者がトラック延長機能を使って、曲の展開が途中で切り替わる曲が作れるか試してみたのが以下の曲だ。
この曲ではヒップホップのサブジャンル「ドリル」と「ジャージークラブ」の2つを、トラック延長機能を使って、曲の前半と終盤で切り替えている。その際に役立ったのが「Advanced Controls」というリミックス/トラック延長の両方に含まれている追加機能だ。
トラック延長機能では、元の曲の長さを参照して、リミックス/延長する曲にどの程度、そのテイストを反映させるかを設定できる。反映の度合いは、「Context Length」というスライダーを使って設定する。スライダーは元の曲に対して、1秒〜2分までの範囲で参照する長さを設定できる。この時間を長くすると、出力の一貫性が向上し、一貫性のあるバース(導入部分)やコーラス(サビ)を作りやすくなる。逆に短くすると、柔軟性が増すが、出力に一貫性がなくなる。この曲では、Context Lengthを10秒に設定すると前半と後半でジャンルがうまく切り替わる曲が生成できた。

Advanced Controlsでは、元の曲の長さを参照して、リミックス/延長する曲にどの程度そのテイストを反映させるかを「Context Length」スライダーで設定できる
有料プランでは部分的な編集も可能
もうひとつ、Udioは独自の強力な機能を持っている。それが先述した有料プランユーザー向けのAudio Inpaintingという修正機能だ。この機能では、出力済みの曲の歌詞の入れ替えや削除、展開の追加のほか、違和感のある音の修正、パート移行をスムーズにするなど、楽曲の部分的な編集が可能だ。

Audio Inpaintingの操作画面。修正したい音楽が波形表示され、その中から修正したい範囲を一度の操作で4つまで選択できる
この機能を使って、先ほどのドリル/ジャージークラブ曲の展開に修正を加えたのが以下の曲だ。
先ほどの曲では、2つの要素の間にラップパートをトラック延長機能を使って差し込んでいるが、最初の出力段階ではラップパートとその前のパートがかなり唐突につながっていた。そこをAudio Inpaintingで修正すると、違和感なくつながるようになった。こうしたかゆいところに手が届く機能は、ユーザーからすると非常にありがたい。
先ほどの曲では、2つの要素の間にラップパートをトラック延長機能を使って差し込んでいるが、最初の出力段階ではラップパートとその前のパートがかなり唐突につながっていた。そこをAudio Inpaintingで修正すると、違和感なくつながるようになった。こうしたかゆいところに手が届く機能は、ユーザーからすると非常にありがたい。
クオリティが高い音楽が手軽に作れる反面、斬新な曲は作りづらい?
Udioを実際に使ってみて思ったのは、従来のDAWを使った音楽制作に近い感覚で使用できるということだ。そのため、筆者にとってUdioは、Sunoなどの類似サービスよりも、自分のイメージをさらに反映しやすいツールだと感じた。一方で、評判どおりクオリティが高い音楽を手軽に作れるが、それがある意味でこのツールの制限になっているようにも感じる。
なぜならリミックスやトラック延長機能では、元の音楽クリップの内容を"ある程度"までは変更できるが、曲調をガラッと変えるようなプロンプトはあまり反映されないからだ(少なくとも筆者が使った中では)。おそらく、これはUdioが音楽的に破綻しないように楽曲を生成するよう、プログラムされているからだと思う。しかしこの仕様によって、ユーザーのクリエイティビティが損なわれてしまうのは少々もったいないようにも思う。
入力したプロンプトから最適解を導き出し、形にするAIは、確かに素早く簡単に音楽を作ることができる。しかし、現段階のAIは、どちらかといえば、平均点の音楽しか作れない。もちろん、そういった音楽は、BGM音楽など汎用的な用途に向いており、それがAI作曲サービスの使い道だというならば、そうなのかもしれない。だが、それだけではユーザーにとって、近いうちに面白みに欠けるツールになってしまうのではないだろうか?
今後はUdioに限らず、類似サービスが実用性に特化するだけでなく、より斬新な音楽を作りたいユーザーの自由な発想を反映させる方向でも進化していくことにも期待したい。そうなれば、さらに作曲AIツールの魅力が増していくはずだ。
なぜならリミックスやトラック延長機能では、元の音楽クリップの内容を"ある程度"までは変更できるが、曲調をガラッと変えるようなプロンプトはあまり反映されないからだ(少なくとも筆者が使った中では)。おそらく、これはUdioが音楽的に破綻しないように楽曲を生成するよう、プログラムされているからだと思う。しかしこの仕様によって、ユーザーのクリエイティビティが損なわれてしまうのは少々もったいないようにも思う。
入力したプロンプトから最適解を導き出し、形にするAIは、確かに素早く簡単に音楽を作ることができる。しかし、現段階のAIは、どちらかといえば、平均点の音楽しか作れない。もちろん、そういった音楽は、BGM音楽など汎用的な用途に向いており、それがAI作曲サービスの使い道だというならば、そうなのかもしれない。だが、それだけではユーザーにとって、近いうちに面白みに欠けるツールになってしまうのではないだろうか?
今後はUdioに限らず、類似サービスが実用性に特化するだけでなく、より斬新な音楽を作りたいユーザーの自由な発想を反映させる方向でも進化していくことにも期待したい。そうなれば、さらに作曲AIツールの魅力が増していくはずだ。

Jun Fukunaga
ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。