日本の逆襲
AIの開発と利用において、日本はアメリカ、中国などに比べて周回遅れになっているというのは有名な話です。素人目に見ても追いつけそうにありません。ただひたすら、よそ様がつくったAIツールを利用料を払って使わせていただく。そして利用料金はどんどんつり上げられていく……そんないつもの光景が目に浮かびます。なぁに、“アドビ税”、“マイクロソフト税”、“アップル税”と一緒。また1つ税が増えただけです(笑)。
とは言いつつも、GAI(Generative AI、生成系AI)の到来で日本にワンチャンスあるのではないかと思っていたりもします。
日本が世界に誇る文化は、歌舞伎や能に加え、マンガ、アニメ、ビデオゲームであると言われます。特に萌えキャラのデザインは世界最高峰です。この萌えキャラのデザインは、t2i(Text to Image AI)と相性が大変良いです。
また、今後は、キャラクターがユーザーに寄り添って会話してくれるサービスが盛んになるでしょう。現に、ChatGPTの出現で、キャラクター召喚装置のGateBoxが再びブームになっています。つまりTGAもまた日本のオタク文化ととても相性が良いのです。
AIが人を興奮させ、感動させるアニメやマンガを自動生成できるようになるのは、まだ先の話だと思いますが、萌えキャラのデザインと、それに「魂」を入れることは、GAIによって実現の可能性が高くなりました。
「世界の80億人に、その人だけの萌えキャラを提供!」なんてことも、GAIを使えば可能でしょう(別に萌えキャラである必要は全くなく、あくまで例です)。
先にも書いたように、これからはただつくるだけでなく、「選ぶ目」が大事になってきます。つくる作業はGAIが手伝ってくれますが、審美眼はそう簡単にはAIに実装できなさそうです。
日本人は、つくるのはヘタだけど選ぶのは上手いと評価されるように、審美眼のレベルの高さは世界の認めるところです。「かわいい」「ヤバい」「エグい」といったフィルターで、AIの生成物を分別していく能力を活かしたサービスを組み立てられれば、無限に生成するGAIと卓越した審美眼の持ち主である日本人とのタッグが”世界最強の物創りシステム”になる可能性だってあるでしょう。
AI×オタク文化×審美眼と組み合わされば、強力なパワーが生まれます。個人的には、ここに日本独自の発達を遂げている文房具文化が融合すると、ますます日本がアドバンテージを持つビジネスが出来上がるのではと考えています。
とは言いつつも、GAI(Generative AI、生成系AI)の到来で日本にワンチャンスあるのではないかと思っていたりもします。
日本が世界に誇る文化は、歌舞伎や能に加え、マンガ、アニメ、ビデオゲームであると言われます。特に萌えキャラのデザインは世界最高峰です。この萌えキャラのデザインは、t2i(Text to Image AI)と相性が大変良いです。
また、今後は、キャラクターがユーザーに寄り添って会話してくれるサービスが盛んになるでしょう。現に、ChatGPTの出現で、キャラクター召喚装置のGateBoxが再びブームになっています。つまりTGAもまた日本のオタク文化ととても相性が良いのです。
AIが人を興奮させ、感動させるアニメやマンガを自動生成できるようになるのは、まだ先の話だと思いますが、萌えキャラのデザインと、それに「魂」を入れることは、GAIによって実現の可能性が高くなりました。
「世界の80億人に、その人だけの萌えキャラを提供!」なんてことも、GAIを使えば可能でしょう(別に萌えキャラである必要は全くなく、あくまで例です)。
先にも書いたように、これからはただつくるだけでなく、「選ぶ目」が大事になってきます。つくる作業はGAIが手伝ってくれますが、審美眼はそう簡単にはAIに実装できなさそうです。
日本人は、つくるのはヘタだけど選ぶのは上手いと評価されるように、審美眼のレベルの高さは世界の認めるところです。「かわいい」「ヤバい」「エグい」といったフィルターで、AIの生成物を分別していく能力を活かしたサービスを組み立てられれば、無限に生成するGAIと卓越した審美眼の持ち主である日本人とのタッグが”世界最強の物創りシステム”になる可能性だってあるでしょう。
AI×オタク文化×審美眼と組み合わされば、強力なパワーが生まれます。個人的には、ここに日本独自の発達を遂げている文房具文化が融合すると、ますます日本がアドバンテージを持つビジネスが出来上がるのではと考えています。
まとめのようなもの:人は言葉でコミュニケーションする
「人は言葉でコミュニケーションする生き物です」
言うまでもないような当たり前の話ですが、昨今のGAIブーム、特にChatGPTをはじめとする対話型AIで注目されるべき点は「言葉、対話によってAIを働かせる。言葉によってAIと遊ぶ、働く」という点ではないでしょうか。
人は他の動物と違って、言葉を操ることで文明を進化させてきました。人は言葉によって情報を得るだけじゃなく、社会の制御、技術の開発、世界の理解や美的創発も言葉によるところが多いわけです。
言葉によって喜び、悲しみ、怒り、不安になります。その結果、言葉のせいで体調を崩したり、回復したり、最悪の場合、自分や他人に危害を与えるきっかけすらつくります。
普段、あまりにも当たり前に言葉を使っているので不思議に感じませんが、言葉という道具の利用は、われわれの生活のほとんどに影響を与えています。
もし言葉がなかったら、科学も哲学も宗教も発展しなかったでしょうし、小説、詩、マンガ、そして多分絵画でさえ発展しなかったでしょう。逆にケンカや戦争や詐欺もなかったかもしれません。
言葉で考え、言葉で見つけ、言葉で思い、言葉で指し示し、言葉で喜び、言葉で悲しみ傷つく。人間の営みは、全て言葉という道具を駆使して機能しているといって差し支えないでしょう。
今のところ、GPT-x、ChatGPTの活用法としては、検索に使えるとか、カスタマーサポートに使えるとか、面白い雑談ができるなどに偏っていますが、「人と言葉を通して何を一緒にできるか」の探求は無限の可能性がありそうです。先の1億人でChatGPTの活用法を探るなかで、誰かがこの鉱脈にぶち当たるんじゃないかと期待しています。
言葉による生成は、人と人のコミュニケーションだけに限りません。
既にGPT-xが実用レベルのプログラムを書けることが証明されていますし、Excelのマクロを組んだり、htmlを駆使して気の利いたWebサイトをつくったりもできます。テキストで書かれているものって、意外に多いものです。それが全てTGAの活用の対象になるわけですから、ここでも思いがけないような活用法が発明されるんじゃないでしょうか。
そこまでAIが発達すると、「AIが人を支配するのでは」という恐怖や危険性を声高に発する方もいらっしゃいますが、もともと安全性バイアスの低い筆者には、ワクワクしかありません。もし、この程度のAIに支配されてしまうなら、人間の知能なんてそもそもその程度のものだったということじゃないでしょうか。
AIは便利なツールです。今後ますます便利になります。機能アップにとどまらず、ますますブラックボックス化していくでしょう。便利な道具は、良い人が使えば良い結果を、悪い人が使えば悪い結果を生みます。AIに限らず全ての道具においてそれは止められないことだと思います。
AIのポテンシャルは人が心配する範囲を軽く飛び越えてくるので、怖がっていても仕方がないということもあります。
今もなお「AIか人間か」と二者択一で議論されるのが不思議でなりません。AIは便利なツールであり、頼もしい相棒でもあります。AIが全てのクリエイティブの領域を担う必要はそもそもなく、AIが得意なところ、あるいは人間がやりたがらないところはAIに任せて、人間が得意なところ、好きなところは人間がやればよいだけの話だと思います。人とAIの競合ではなく、人とAIの協業を考えるべきだと思います。
あまりこのあたりのことをねちねち書くと筆者はAI業界で生きていけなくなりそうなので、今回はこの辺りでお開きとしたいと思います。
言うまでもないような当たり前の話ですが、昨今のGAIブーム、特にChatGPTをはじめとする対話型AIで注目されるべき点は「言葉、対話によってAIを働かせる。言葉によってAIと遊ぶ、働く」という点ではないでしょうか。
人は他の動物と違って、言葉を操ることで文明を進化させてきました。人は言葉によって情報を得るだけじゃなく、社会の制御、技術の開発、世界の理解や美的創発も言葉によるところが多いわけです。
言葉によって喜び、悲しみ、怒り、不安になります。その結果、言葉のせいで体調を崩したり、回復したり、最悪の場合、自分や他人に危害を与えるきっかけすらつくります。
普段、あまりにも当たり前に言葉を使っているので不思議に感じませんが、言葉という道具の利用は、われわれの生活のほとんどに影響を与えています。
もし言葉がなかったら、科学も哲学も宗教も発展しなかったでしょうし、小説、詩、マンガ、そして多分絵画でさえ発展しなかったでしょう。逆にケンカや戦争や詐欺もなかったかもしれません。
言葉で考え、言葉で見つけ、言葉で思い、言葉で指し示し、言葉で喜び、言葉で悲しみ傷つく。人間の営みは、全て言葉という道具を駆使して機能しているといって差し支えないでしょう。
今のところ、GPT-x、ChatGPTの活用法としては、検索に使えるとか、カスタマーサポートに使えるとか、面白い雑談ができるなどに偏っていますが、「人と言葉を通して何を一緒にできるか」の探求は無限の可能性がありそうです。先の1億人でChatGPTの活用法を探るなかで、誰かがこの鉱脈にぶち当たるんじゃないかと期待しています。
言葉による生成は、人と人のコミュニケーションだけに限りません。
既にGPT-xが実用レベルのプログラムを書けることが証明されていますし、Excelのマクロを組んだり、htmlを駆使して気の利いたWebサイトをつくったりもできます。テキストで書かれているものって、意外に多いものです。それが全てTGAの活用の対象になるわけですから、ここでも思いがけないような活用法が発明されるんじゃないでしょうか。
そこまでAIが発達すると、「AIが人を支配するのでは」という恐怖や危険性を声高に発する方もいらっしゃいますが、もともと安全性バイアスの低い筆者には、ワクワクしかありません。もし、この程度のAIに支配されてしまうなら、人間の知能なんてそもそもその程度のものだったということじゃないでしょうか。
AIは便利なツールです。今後ますます便利になります。機能アップにとどまらず、ますますブラックボックス化していくでしょう。便利な道具は、良い人が使えば良い結果を、悪い人が使えば悪い結果を生みます。AIに限らず全ての道具においてそれは止められないことだと思います。
AIのポテンシャルは人が心配する範囲を軽く飛び越えてくるので、怖がっていても仕方がないということもあります。
今もなお「AIか人間か」と二者択一で議論されるのが不思議でなりません。AIは便利なツールであり、頼もしい相棒でもあります。AIが全てのクリエイティブの領域を担う必要はそもそもなく、AIが得意なところ、あるいは人間がやりたがらないところはAIに任せて、人間が得意なところ、好きなところは人間がやればよいだけの話だと思います。人とAIの競合ではなく、人とAIの協業を考えるべきだと思います。
あまりこのあたりのことをねちねち書くと筆者はAI業界で生きていけなくなりそうなので、今回はこの辺りでお開きとしたいと思います。
森川 幸人
ゲームAI設計者、グラフィック・クリエイター、モリカトロン株式会社代表取締役、筑波大学非常勤講師
ゲームAIの研究開発、CG制作、ゲームソフト、アプリ開発を行う。ゲーム「がんばれ森川君2号」「ジャンピング・フラッシュ」「アストロノーカ」「くまうた」「ねこがきた」などを開発。ゲームAIに関する論文「ゲームとAは相性がよいのか?」(2017年・人工知能学会)などを執筆。X:@morikawa1go