後日譚が語るもの
前述の通り、1591年(天正19年)に秀長が病没し、1595年(文禄4年)に秀保も17歳で早世すると、高虎は高野山に登って出家した。
このとき高虎は39歳。武将として脂の乗った年齢であり、秀吉政権の中枢に近い場所にいた。にもかかわらず、主家の断絶と共に武士を辞めようとした。この決断が彼のどんな心情を表したものか、改めて言う必要はないだろう。
秀吉の懇請で山を下りた後も、高虎は秀長への敬意を持ち続けた。秀長の墓所の修繕費を後年自ら工面したという逸話も残っている。徳川家康の元で伊勢津32万石の大名となってからも、旧主への筋を通す姿勢は変わらなかった。
このとき高虎は39歳。武将として脂の乗った年齢であり、秀吉政権の中枢に近い場所にいた。にもかかわらず、主家の断絶と共に武士を辞めようとした。この決断が彼のどんな心情を表したものか、改めて言う必要はないだろう。
秀吉の懇請で山を下りた後も、高虎は秀長への敬意を持ち続けた。秀長の墓所の修繕費を後年自ら工面したという逸話も残っている。徳川家康の元で伊勢津32万石の大名となってからも、旧主への筋を通す姿勢は変わらなかった。
秀長が残した「採用哲学」
高虎のエピソードから浮かび上がる豊臣秀長の人物像を、いくつか挙げてみよう。
1つ目は、経歴の傷よりも本質を見る眼だ。同僚斬殺や複数回の出奔という「問題行動」を、秀長は不当な評価への反発として読み解いた。問題の原因が本人の資質にあるのか、それとも環境や評価者の側にあるのかを見分ける力だ。
2つ目は、即断即決の決断力。300石という提示は、当時の高虎の「市場価値」からすれば破格だった。しかし秀長は、躊躇して他家に取られるよりも、自分の判断に賭ける決断をしたわけだ。
3つ目は、人に「場」を与える発想だ。秀長は高虎を単なる戦力として使わず、家を興し、結婚し、一族を呼び寄せる基盤ごと与えた。短期の取引ではなく、長期の関係を前提に人を処遇するスタイルといえるだろう。
4つ目は、自らの位置取りの明快さだ。兄を立て、自分は補佐に徹するという役割に迷いがなかったからこそ、部下を警戒せずに大きく用いることができたのではないだろうか。
そして、37歳の実務者が、21歳の要注意人材を抱えた。この判断が、秀長自身の器を最もよく映し出している。豊臣政権において「諸大名と秀吉をとりなす要」と評された秀長の統治スタイルは、1576年の長浜において、既に形として現れていたのだ。
現代の組織でも、「ハイパフォーマーだが性格や職歴に問題がある」という人物をどう扱うかは、管理職が直面しがちな問題だ。秀長の答えは、450年経ったいまも古びない。採るなら迷わず採り、能力に応じた評価を示す。そして、そのパフォーマンスを発揮できる舞台を完璧に用意する。現代の高虎たちも、その熱意に応えてくれるはずだ。
1つ目は、経歴の傷よりも本質を見る眼だ。同僚斬殺や複数回の出奔という「問題行動」を、秀長は不当な評価への反発として読み解いた。問題の原因が本人の資質にあるのか、それとも環境や評価者の側にあるのかを見分ける力だ。
2つ目は、即断即決の決断力。300石という提示は、当時の高虎の「市場価値」からすれば破格だった。しかし秀長は、躊躇して他家に取られるよりも、自分の判断に賭ける決断をしたわけだ。
3つ目は、人に「場」を与える発想だ。秀長は高虎を単なる戦力として使わず、家を興し、結婚し、一族を呼び寄せる基盤ごと与えた。短期の取引ではなく、長期の関係を前提に人を処遇するスタイルといえるだろう。
4つ目は、自らの位置取りの明快さだ。兄を立て、自分は補佐に徹するという役割に迷いがなかったからこそ、部下を警戒せずに大きく用いることができたのではないだろうか。
そして、37歳の実務者が、21歳の要注意人材を抱えた。この判断が、秀長自身の器を最もよく映し出している。豊臣政権において「諸大名と秀吉をとりなす要」と評された秀長の統治スタイルは、1576年の長浜において、既に形として現れていたのだ。
現代の組織でも、「ハイパフォーマーだが性格や職歴に問題がある」という人物をどう扱うかは、管理職が直面しがちな問題だ。秀長の答えは、450年経ったいまも古びない。採るなら迷わず採り、能力に応じた評価を示す。そして、そのパフォーマンスを発揮できる舞台を完璧に用意する。現代の高虎たちも、その熱意に応えてくれるはずだ。

小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。













