スマートフォン全盛の現在でも、いわゆる「ガラケー」あるいは「ガラホ」と呼ばれるフィーチャーフォンがまだ販売されている。しかし誰もがスマートフォンを使うようになり、いずれフィーチャーフォンはなくなってしまうのだろうか?
スマホ時代以前に存在した「ひげ剃りケータイ」とは
スマートフォンの普及とともにコミュニケーションの手段もビデオ会議や写真、動画のやりとりへと変わってきたが、音声通話やテキストメッセージが使われなくなったわけではない。特に音声通話ではフィーチャーフォンはスマートフォンよりも持ちやすく電池の持ちも良く使いやすい。そして価格も安いというメリットがある。海外でも新興国を中心にフィーチャーフォンの新製品は今も定期的に発売されている。
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新興国では今もフィーチャーフォンは多く販売されている
日本では、1999年に始まった「iモード」に代表されるケータイインターネットサービスが急速に進んだこともあり、フィーチャーフォンの性能も海外に比べると急速に進化していった。2004年にノキア製の「702NK」が当時のボーダフォン(現在のソフトバンク)から発売されたが、「Symbian OS」を搭載した海外メーカーのスマートフォンよりも、日本のiモードケータイの方が画面サイズやカメラ画質などの性能が高かった。2008年にソフトバンクが「iPhone 3G」を発売した頃も、まだまだiモードで十分と考える人も多かったほどだ。
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初期の海外製スマホは日本のiモードケータイよりスペックが劣った。写真は、 ボーダフォンから2004年に発売された「702NK」
iPhoneが登場した頃は通信回線も今ほど高速ではなく、SNSサービスも普及していなかったことから、通話とケータイインターネットを行うだけならフィーチャーフォンの方が十分便利だったのだ。
海外では、半導体メーカーであるメディアテックが1つのチップセットを搭載すればフィーチャーフォンを構成する基本部品を取り付けるだけでケータイが完成するプラットフォームを開発。この統合チップセット(システムオンチップ、SoC)の思想は今のスマートフォン設計でも採用されている。そしてこのフィーチャーフォン向けチップセットが開発された頃、中国ではケータイの製造が免許制から届け出制へと変わったこともあり、町工場レベルの規模ながらフィーチャーフォンを作るメーカーが続出したのだ。
海外では、半導体メーカーであるメディアテックが1つのチップセットを搭載すればフィーチャーフォンを構成する基本部品を取り付けるだけでケータイが完成するプラットフォームを開発。この統合チップセット(システムオンチップ、SoC)の思想は今のスマートフォン設計でも採用されている。そしてこのフィーチャーフォン向けチップセットが開発された頃、中国ではケータイの製造が免許制から届け出制へと変わったこともあり、町工場レベルの規模ながらフィーチャーフォンを作るメーカーが続出したのだ。
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メディアテックがフィーチャーフォンメーカーを爆発的に増やした
中国発のフィーチャーフォンは通信方式が異なる日本や韓国には輸出されなかったが、それ以外のほぼ全世界へ輸出され、雨後のタケノコのようにメーカーが増えると同時に価格競争も厳しくなっていった。各社は製品の差別化を図るために突拍子もないアイデアを盛り込んだ製品も開発していったが、その流れのなかから生まれたフィーチャーフォンが「ひげ剃りケータイ(SHAVE MOBILE)」だ。
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世界で唯一のひげ剃りケータイ
ひげ剃りケータイと聞いても何のことかイメージできない人が多いだろう。ひげ剃りケータイは、その名の通り、フィーチャーフォンの下部に電動ひげ剃りが内蔵されているのだ。おそらく中国のひげ剃りメーカーが、ひげ剃りの差別化を図るために「ならばケータイとくっつけてしまえばいい」と考えて生まれた製品なのだろう。
この手の製品にはメーカー名の記載がないものも多く、製造元や開発者にたどり着くのも難しい。そのためどういった経緯でひげ剃りケータイが開発されたのか、作り手の真意を知るのはもはや難しい。ちなみに2009年ごろの製品だ。
この手の製品にはメーカー名の記載がないものも多く、製造元や開発者にたどり着くのも難しい。そのためどういった経緯でひげ剃りケータイが開発されたのか、作り手の真意を知るのはもはや難しい。ちなみに2009年ごろの製品だ。
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ひげ剃りメーカーが開発したのだろうか? 真相は不明だ
ひげ剃りケータイ以外にも中国からはさまざまな「面白ケータイ」が登場した。ペンギンや熊の形をしたキャラクターケータイは、日本の有名キャラを模した著作権を無視のデザインも多数登場。サッカーのワールドカップ開催に合わせ、サッカーボール型のケータイも見かけたものだ。
また内蔵バッテリーが2つに分かれており、うち1つにはワイヤレスカメラが内蔵され室内に設置すれば盗撮できるというスパイケータイとも呼べる製品も存在した。プロジェクター内蔵ケータイは、その後スマートフォンでも一部のメーカーが製品化している。そして腕時計型ケータイは今でも中国では子供向け製品として大手メーカーから販売されており、ルーツをたどればこれらの面白ケータイに行き着くのだ。
また内蔵バッテリーが2つに分かれており、うち1つにはワイヤレスカメラが内蔵され室内に設置すれば盗撮できるというスパイケータイとも呼べる製品も存在した。プロジェクター内蔵ケータイは、その後スマートフォンでも一部のメーカーが製品化している。そして腕時計型ケータイは今でも中国では子供向け製品として大手メーカーから販売されており、ルーツをたどればこれらの面白ケータイに行き着くのだ。
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裏から見るともはやフィーチャーフォンには見えないひげ剃りケータイ
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山根 康宏
香港在住携帯研究家
スマホとSIMを求めて世界各国を取材中。海外、特に中国の通信事情に精通している。大手メディアへの執筆も多数。海外スマホ・ケータイを1800台所有するコレクターでもある。