アカデミー賞直前！ディズニー映画を「音楽」で見る――ミラベル、アナ雪、スター・ウォーズに共通することとは

2022.3.25

ディズニーの世界観や文化などを伝える、国内有数のディズニーファンブログ「dpost.jp」の主宰者mtakeshiがディズニーコンテンツの知られざる楽しみ方を紹介します。今回はアカデミー賞にまつわるお話です。

2022年3月27日（現地時間）、第94回アカデミー賞授賞式がハリウッドで行われます。個人的に気になっているのは、アカデミー「主題歌賞」。ディズニーを追いかけている私は、ディズニー・アニメーション・スタジオ作品でディズニープラスでも配信中の『ミラベルと魔法だらけの家』の受賞に期待しているのですが、このメインテーマともいえる『Dos Oruguitas』が受賞すると、ある記録がもう1つ生まれるのです。それは楽曲の製作者である、リン＝マニュエル・ミランダの「EGOT」達成です。

EGOTとは、E＝エミー賞、G＝グラミー賞、O=オスカー／アカデミー賞、T＝トニー賞という、テレビ、音楽、映画、演劇のすべての分野で受賞した、ショービジネスにおけるグランドスラムを意味します。かつてEGOTを達成した（ディズニーに関連する）レジェンドといえば、『アラジン』『美女と野獣』などを手掛けたアラン・メンケン、言わずとしれた“レリゴー”を含む『アナと雪の女王』楽曲制作のロバート・ロペスなどが挙げられます。そして今回、リン＝マニュエル・ミランダがそこに並ぼうとしています。

リン＝マニュエル・ミランダが作り出す「音楽が主導するストーリー」

リン＝マニュエル・ミランダの名前をまだ知らないという読者も多いでしょう。ディズニー専属のアーティストではありませんが、近年はディズニーに近い仕事がとても多く、作曲家であり作詞家、そして監督、脚本、出演もこなすマルチな活動を行うアーティストです。意外な作品で、すでにあなたも彼の姿を見たり、音楽を聴いたりしているはずです。

彼の名前が（ディズニー界で）知れ渡ったのは『モアナと伝説の海』でしょう。この作品は楽曲とストーリーが密につながっており、さらりと見ても楽しい作品ではあるものの、音楽性からもう一度見直すと思わずうなってしまうような構成となっています。本作のプロモーションでは、あのレリゴーに続く「アイルゴー」などといううたい文句で、メインテーマともいえる『How far I’ll Go』という楽曲を大きくクローズアップしました。が、この楽曲、レリゴーほど盛り上がらなかったというのが事実。そして実際に聞いてみると、楽曲としての盛り上がりも足らないと思いませんでしたか？

私もこの楽曲を最初に体験したとき、あの『Let it go』に比べるのは間違いだと思いました。Let it goはその1曲で映画の印象をがらりと変えてしまうほどの力を持つものでした。しかしこのHow far I’ll Goはそこまでではなかったか……と思ったものの、リン＝マニュエル・ミランダはそこに面白いギミックを入れ込んでいました。それがクライマックスで流れる『I am Moana』という楽曲です。

この楽曲はHow far I’ll Goのリプライズに相当するもので、映画クライマックスの部分でもとのメロディを繰り返しつつも、サビの盛り上がりが足りないと思った部分にたった5音、「アイ・アム・モアナ！」と付け加えたのです。それにより、このメロディは完成しました。しかも、本作は「自らが自らの意志で名乗りを上げる」ことがストーリーの根幹にあります。「なにかが足りない」ことでうまくいかなかったストーリーに、必要な要素を音楽的に表現し、ストーリーを完成させる——これには思わずうなってしまいました。皆さんもそこに注目しながら、ぜひもう一度鑑賞してみてください。大きく印象が変わるはずです。

リン＝マニュエル・ミランダは、あの人気ディズニー作品にも出演

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mtakeshi

ライター
2012年よりITセキュリティのフリーライターとして活動するかたわら、個人活動として“広義のディズニー”を取り上げるWebサイト「dpost.jp」を1996年ごろから運営中。テーマパークやキャラクターだけではない、オールディズニーが大好物。2020年、2022年には講談社「ディズニーファン」に短期連載も。
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